【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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名無しNIPPER
[saga]
2018/05/13(日) 21:54:59.65 ID:sptbJ6v70
…………………………
「……どういうつもり?」
彼は草木への水やりのため、古風な学園に似つかわしい金属製のじょうろに水を汲んでいた。そんな彼に黄色い歓声を上げる女子生徒なら多数いるが、こんなつめたい声をかける人物は、そう多くはない。
「おやおや。後藤さん。まずはあいさつが先だろう? おはようございます」
「この辺には誰もいないわよ。その嫌みったらしい営業スマイル、さっさと取りなさいよ」
「はは、これでも先生方と生徒の信頼は勝ち得ているつもりなんだけどね」
彼は水を止め、声の主を振り返った。漆黒の長髪に漆黒の目、病的なまでに白い肌、細い手足。不健康そうな見た目ではあるが、尖ったナイフのような鋭い美しさを持った少女だ。洗練されているといって、間違いではないだろう。鈴蘭は元より不機嫌そうな目をますますすがめて、彼を睨み付けた。
「くだらないおしゃべりをするつもりはないの。どういうつもりかと聞いているのよ」
「何の話かな」
「とぼけないで。美旗あきらのことよ」
なるほど。ただのヒステリックな少女だと思っていたが、それだけでもないようだ。よく周囲を見て、彼の不審な行動を気にかけていたのだろう。
「どういうつもりも何もない。ただの気まぐれだよ」
「うそをつきなさい。あんた、一体何をたくらんでいるの?」
鈴蘭の目は疑念に満ちていた。もちろん、彼だって鈴蘭がそんな顔をする理由はわかっている。彼自身、己が敵である美旗あきらに何かをしていると知れば、罠にでもかけようと考えていると思うだろう。
「どうせ、プリキュアを陥れる算段でも練っているんでしょう? 一枚噛ませなさいよ」
鈴蘭が嗜虐的に笑う。彼女の本質は、その嗜虐的な闇だ。過去に何があったのか知らないし知りたいとも思わないが、その彼女の闇がロイヤリティの光やホーピッシュの希望を許せるはずもないだろう。鈴蘭は決して光とは相容れない。それは彼とて同じことだ。しかし。
「そうしたいところは山々だけどね。ぼくらの総大将はそういう汚い手を好まないらしい」
「あら、じゃあどうして美旗あきらに毎朝付き合ってやってるわけ? どっかの体育の先生みたいに、『どこまで強くなるか見てみたい』なんて言い出すつもりじゃないでしょうね」
「郷田先生みたいな酔狂なことをするつもりはない。ただの気まぐれだよ」
鈴蘭はしばらく疑念に満ちた顔で彼を睨み付けていた。やがて、どうでも良さそうに言った。
「……あっそ。じゃ、あたしはあたしでやらせてもらうわ」
興味は失せたとばかりに、まるで猫のような気質の鈴蘭は、すでに彼に背を向けていた。彼はその鈴蘭の背中が消えるのを見送って、そっと、蛇口をひねり、水を再びじょうろに注ぎ始めた。
「……そう。ただの気まぐれさ。やりたいと思ったことを我慢するなんて、ぼくではないからね」
彼は腰のホルダーに手をやり、目当てのものを取り出した。
―――― 『蘭童さんの今までの色々なものが詰まっているんですね』
「ははっ。まったく、プリキュアに教えられるとはね」
それは、小さく、くたびれた、彼愛用の剪定ばさみだ。
「過去にとらわれたりはしない。過去のぼくも、利用してやるというだけのことだ。このはさみにこめられた、もう思い出せない過去のぼくの欲望を利用すれば……」
彼は酷薄に笑む。
「キュアドラゴが変身できない今がチャンスだ。いまのうちに、プリキュアを叩きつぶす」
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