【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
1- 20
546:名無しNIPPER[saga]
2018/05/13(日) 21:51:45.45 ID:sptbJ6v70

 ふたりは身を隠せる場所が少なくなった外で、見つからないようにあきらの後をつけた。あきらが中庭に入るのを見届けて、ふたりも中庭に足を踏み入れる。と――、

「……ん? あれ? あきらは?」

「急にいなくなったわね……」

 一瞬、あきらが自分たちを撒いたのかという考えがよぎったが、そこまで時間的な余裕があったとは思えない。そもそも、尾行が気づかれている様子はなかったし、あきらが自分たちにそこまでするとは思えない。ふたりはそろりそろりと中庭を進む。プリキュアに成り立ての頃、まだただの緑地という風情だった中庭は、今や立派なイングリッシュガーデンに仕上がっている。そこかしこに植えられているハーブや色とりどりの花が季節感を出し、きれいに動物の形に刈りそろえられている植樹が何とも楽しい印象を与えてくれる。これを主事の蘭童さんひとりでやったというのだから、凄まじいことだとめぐみは思う。

「……ん、ねぇめぐみ。何か聞こえない?」

「……?」

 ゆうきの小声に耳を澄ませてみると、たしかに小さな話し声が聞こえる。ふたりは顔を見合わせ、お互いに口の前に人差し指を当てた。そのまま、そろりそろりと、その話し声のする方向へ歩を進める。と――、



「――ここはこうした方がいいかな」

「ふむふむ。なるほど……」



「「……!?」」

 ふたりして驚きに声を上げそうになる。お互いの口を手で押さえ合い、驚きで見開いた目を見合わせる。とんでもないものを見つけてしまった。

 そこは、綺麗に刈りそろえられた植樹に囲まれたスペースだ。中に入るには、身をかがめて――場合によっては匍匐前進で――植樹をくぐる必要がある。生徒たちはその手間を厭って滅多にその中には入らない。そのスペースにあるのは、座るのに適した大きな岩が四つだけだ。そんなスペースに入るくらいなら、誰だって中庭に点在するベンチや椅子に座るだろう。

 けれど、その植樹の中に、今は人がいた。それもふたり。片方はふたりが後をつけていたあきら。そしてもう片方が、とんでもなく意外で、なおかつ先ほどのめぐみの冗談に合致する相手だったのだ。ふたりは植樹の陰に隠れて、あきらと何やら親しげに話をするその相手を何度も確認した。

(ね、ねえねえ、あれ、主事の蘭童さん……だよね)

(そうね。わたしにもそれ以外の人に見えないわ)

(ほ、本当にデートだったんだね……)

 ゆうきは声を潜めたまま、顔を真っ赤にして、

(しかも、赴任して一週間で、中等部から高等部までファンでいっぱいになった、イケメンの蘭童さんが相手とは……)

(まだそうと決まったわけじゃないでしょう)

 と言いつつも、めぐみも顔を赤くしている。あのおとなしいあきらが、年上のイケメンと親しげに放課後に密会をしているだなんて、誰が想像できただろうか。

(や、やっぱり、そういうことなのかしら……)

(……はぇ〜、あきら、おっとなー)

 ふたりの少女はそれからしばらく、年上のイケメンと親友との逢瀬の現場をドキドキと眺め続けていた。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
647Res/1111.54 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice