【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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523:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:39:05.38 ID:7mW+iPec0

…………………………

 学校でそんな会話があったのとほぼ同時刻。ひなカフェ二階の宿舎で電話のベルが鳴る。

「はいはーい」

 パタパタとスリッパの音がして、家主がその電話を取ったようだ。彼女はそんな音を自室から聞きながら、ただボーッと考え事をしていた。

 つい先日の、木工室でのこと。自分が倒れていたらしいということ。後で同じ宿舎に住まう仲間たちに聞くと、同時刻、凄まじい闇の力を感じた、と口を揃えて言うのだった。そしてどうやら、その闇の力は、彼女のものであったようだと。

「あたし、一体あの日、何をしたの……? あたしは一体どうなったの……」

 無理に思い出そうとすると、己の過去を思い出そうとするときのように頭が痛む。かろうじて、木工室の前までいったことは覚えている。そして、そのとき、木工室の中で、プリキュアたちが何かを話していたことも。しかし、その話の内容までは思い出せない。

 次の記憶は、保健室で目覚めてからのものだ。はじめに聞いても、何も教えてはくれなかった。はじめも何かを見たようだったが、それを話して彼女に無用な心配を与えるのを厭ったのだろう。

「あたし……」

「鈴蘭ちゃーん! 電話よー!」

 と、廊下から大声が飛んでくる。家主のひなぎくさんの声だ。

「お友達の、騎馬はじめさんからよー!」

「……!? はじめから!?」

 彼女は部屋を飛び出して、ひなぎくさんの元へと馳せた。ひなぎくさんからひったくるように電話を奪い取ると、受話器を耳に当てる。

「も、もしもし……?」

『ああ、鈴蘭。夜遅くに急に電話してすまないね』

「……べつに」

 彼女は精一杯、不機嫌そうな声を出そうと努めた。けれど、顔は自然と赤くなるし、声は上ずってしまう。そんな様を見て、目の前でニヤニヤと彼女を見つめているひなぎくさんも気にかかる。

「何の用よ?」

『うん……』はじめは歯切れ悪く。『実は、用事という用事はないんだ。ただ、少し鈴蘭の声が聞きたくなって』

「は……?」

 動揺で受話器を取り落としそうになる。顔が火照る。

「ばっ、ばかじゃないの。用もないのに電話してきたの?」

『ああ、私もばかだと思う。でも、普通の女子中学生というものは、結構そういうことをするそうだよ。仲良しの友達同士なら』

「し、知らないわよ」

『ふふ、私も知らない。今までそういうことには疎かったからね。でも、ふと鈴蘭のことを思い浮かべたら、声が聞きたくなったんだ』

「……ふん」

 彼女は内心のドキドキを絶対に悟られまいと、努めて落ち着いた声を出す。

「じゃあ、もう気は済んだ?」

『いや、もう少しだけお話をしないかい? 鈴蘭が忙しかったら断ってくれて構わないけど』

「い、忙しくはないけど……」

『じゃあ、いいね。お話をしよう』

「誰もいいなんて言ってないでしょ!」

 そう答えつつも、彼女は決して受話器を置こうとはしなかった。はじめが言葉を紡ぐのを、しっかりと聞いて、応えて、笑った。はじめは最近、生徒会活動で大忙しだ。そんな話を、彼女にしてくれた。学校でのはじめは多忙だ。彼女ばかりに構っていられるわけではない。だからこそ、ひょっとしたらはじめは、ゆっくり彼女とふたりきりで話をする時間が欲しかったのかもしれない。そんなことを考えると、また頬が熱くなっていく。

『それでね――あっ……』

 ふと、はじめの言葉が途切れた。



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