【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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524:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:39:43.37 ID:7mW+iPec0

「どうかしたの?」

『あっ、いや……』

 電話の向こうで、はじめが誰かと話す声が聞こえる。遠くて聞き取ることはできないが、彼女はなんとか聞き取ろうと耳を澄ましたが、結果は変わらなかった。

『……ごめん、鈴蘭。もう切らなきゃだ』

「えっ……」

 やがて声が戻ると、はじめはそう言った。

『そろそろ寝る時間だしね。じゃあ、おやすみ』

「え、ええ。おやすみ」

『また明日』

 そして、はじめは電話を切ったようだった。

「……何よ、あいつ。自分から話したいとか言ってきたくせに、自分から切っちゃうんじゃない。勝手な奴」

 ぼやきが勝手に口をつく。もっと話をしていたかったなんて、口が裂けても言えないけれど、そのぼやきは、暗にそう言っているようなものだった。

「……へぇえ」

「っ!?」

 彼女が受話器を置くと、すぐそばでそんな楽しそうな声が聞こえた。

「鈴蘭ちゃん、随分と仲良しなお友達ができたのね」

「ず、ずっとそこにいたの!?」

 ひなぎくさんだ。ニヤニヤと物珍しげに彼女を見つめている。

「いたよ。鈴蘭ちゃんが、楽しそうにお喋りするの、ずっと聞いてたよ。はじめちゃんだっけ?」

「っ……べ、べつに楽しくなんかなかったし!」

「通話を終えるときもなんか名残惜しそうだったね」

「そんなことないです!!」

 まったく失礼な家主である。彼女はそのままずんずんと自分の部屋に行き、戸を閉じる。

「……誰が、楽しそう、よ」

 胸がドキドキする。

 まるで、友達からの電話を喜ぶみたいに、心が跳ねているのだ。

「こんなの、あたしじゃない。これは、本当のあたしじゃない……」

 彼女はその感情の正体を知らない。彼女は、その感情をはるか昔に失ってしまったからだ。

 ふと、気がかりなことが頭に浮かぶ。

「はじめ、一体どうして、いきなり電話を切らなきゃだなんて言ったのかしら……?」



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