【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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522:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:38:13.25 ID:7mW+iPec0

…………………………

「どういうつもりだい?」

 部活が終わり、事務的な仕事を片付けるために職員室にこもっているときのことだった。いつも遅くまで同じように仕事をしている若手の松永先生や皆井先生、誉田先生はもう帰ってしまっていた。彼はすでに職場には自分ひとりが残っていると思っていたから、その声に少し驚いた。

 その声は、職員室の入り口に寄りかかる、主事のシュウのものだった。

「こんな時間まで仕事をしていたのか。感心なことだな、蘭童」

「夜しかできない作業もあるんだ。仕方ないだろう」 シュウは嫌そうな顔をしながら。「そんなことはどうでもいい。君は一体、どういうつもりなんだい?」

「何の話だ?」

「大埜めぐみの話だよ」

「なるほど。聞いていたか」

 シュウが言っているのは、今日の剣道部の活動のときのことだろう。



 ――――『私を、弟子にしてください』



 真っ直ぐそう言った、宿敵の顔が思い出される。



 ――――『お願いします。私に剣道を教えてください』



 ――――『守りたいものがあるからです』



 その目は、決意に満ちていた。本気で強くなりたいという意志が、ありありと見て取れるほどの、決意だ。

「どうもこうもない。向こうが私に言ってきたことで、私が責められるいわれはない」

「それはそうかもしれない。だが明日、君は大埜めぐみに何て言うつもりだい? なぜ今日、大埜めぐみの頼みを断らなかった?」

 シュウの追求は止まらない。その目に浮かぶのは、いつもの愉快的な色だけではない。彼を責めるような、彼に怒りを憶えているような、そんな真面目さが見え隠れする。

「明日、大埜の力と決意を試す。もし私の欲望に適うようであれば、奴に剣を教えるも吝かではない」

「正気か? ぼくらの障害となりかねない存在を強くするつもりか?」

 シュウが明確な敵意を彼に向ける。今にもはさみを取り出しそうな様子に、しかし彼は動じない。

「不服か? 蘭童」

「……ぼくがどうでも、あのお方が何と言うかな。悪いが、このことはあの方に報告させてもらうぞ」

「構わん。お前こそ、あの方をあまり舐めるなよ。あの方が、我々の動向を把握していないとでも思っているのか?」

「っ……ならば君は、あの方に滅される可能性もあるというのに、なぜそんな危険なことをする」

「……なんとなくわかるのだ。あの方は、私の欲望を無下にはなさらない。私がしたいことを、きっと許してくださるとな」

「何の信頼だ、それは」

 シュウが吐き捨てるように言う。

「……くだらない。ロイヤリティの家臣ごっこでもしたいのならよそでやるんだね」

 そう言って、シュウは彼に背を向けた。

「ぼくはもう帰る。校内に人はもういない。施錠と警備開始を忘れるなよ」

「誰に言っている。当然だ」

 彼はシュウが去ってからも、しばし目の前を見つめていた。

「……ロイヤリティの家臣ごっこ、か。ふん、くだらん。私は、そんなことがしたいわけではない。ただ、あの方を信頼しているだけだ」

 彼はそう呟くと、机に目を落とし、仕事の続きに取りかかった。



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