【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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486:名無しNIPPER[saga]
2018/04/22(日) 20:46:38.71 ID:TS+ShyS90

「じゃ、はじめるか。王野。後藤」

「はい……。って、わたしたちだけですか?」

「ん? ああ、他に時間内に作品が仕上がらなかった奴がいないからな」

「うぅ、わたしたちだけ……」

 そのゆうきの言葉に、鈴蘭が八重歯をむき出しに、言う。

「一緒にしないでよね。あたしは、転入生だから終わらなかっただけだし。もうすぐ終わるもの」

「……うぅ。転入生にも負けるわたしって……」

「ほらほら、お喋りする暇があったら手を動かせ」

 松永先生が呆れ顔で。

「後藤はあと組み立てとニス塗りと磨きだけだな。サクッと終わらせるぞ」

「わかってるわよ」

 先生に対しても同じ態度なのか、と、ゆうきは戦慄する。ゆうきの常識の中で、年上の人、特に先生に対して丁寧な言葉を使わないなど、ありえないことだったからだ。

「……はぁ。まぁ、少しずつでいいが、後藤は丁寧語を使えるようになるんだぞ」

「ふん、だ。使う場面があればちゃんと使うから、関係ないわ」

 鈴蘭はそう吐き捨てて、自分の作り途中の作品を取りに、木工室後方の保管棚へ向かった。

「あのー、先生」

「ああ、王野はこれだ」

 松永先生はそう言うと、教員用の作業机の上に、木材をどんと置いた。

「この中から好きなだけ持って行け。みんなの材料のあまりだ」

「えっ、こんなにですか?」

「全部使う必要はない。ただ、お前は色々と基礎ができていないからな、マンツーマンで教えながらやっていくぞ」

「……はぁい」

 みんなは普通にできていることなのに、自分だけがマンツーマンでないとできないのかと、肩を落とす。

「まず、図面は読めるな? まずは図面の通りにけがくところからだ。王野のけがきは、なんというかこう……うーん、個性的? だからな」

「無理してフォローしてくれなくていいですよ……」

 けがきとは、材に切断線や穴の印などをえんぴつなどで書くことだ。ゆうきは大量の木材の中から使えそうなものを取り出し、ひとつずつ丁寧にえんぴつでけがき線を入れていった。途中、ぶつからなければならない線と線がずれたり、穴の印の位置がかみ合わなかったり、投げ出したくなるようなことが何度もあったが、そのたびに松永先生は、ゆっくりと、ゆったりと、ゆうきにヒントを投げかけた。

「うーん……」

 松永先生は、決してゆうきに答えを教えてはくれなかった。ゆうきの作業がうまくいかない理由を、ゆうきは自分自身で探し出すしかなかった。

「……終わったわ。ニス塗りも磨きも完ぺきのはずよ」

「ああ、後藤。終わったか」

 松永先生はゆうきにつきっきりだったから、鈴蘭の作業は見ていなかった。ゆうきと違い、鈴蘭はひとりでも大丈夫だと考えていたのだろう。



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