【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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名無しNIPPER
[saga]
2018/03/04(日) 11:53:44.98 ID:NMs8LA5T0
…………………………
「はぁ……」
小さいため息のつもりだった。その後で、想像よりよほど重いため息だったことに、自分で驚いた。
「ゆうき……」
中学生の世界というのは、なんてままならないのだろう。これは、皆が感じているもどかしさなのだろうか。それとも、自分が特別臆病なだけなのだろうか。
きっと、後者なのだろう。
そっと書き綴る日記の中ならば、いくらでも想いを綴ることができるというのに。
小学生の頃から書き続けている詩でも、想いの丈をぶつけることはできるのに。
どうして己の口は、こんなにも不器用なのだ。
「どうしてだろ」
話したいことはいくらでもある。口にしたい言葉がたくさんある。
伝えたい想いが、胸の中に幾重にも積もっている。
もしかしたら、積もり積もって、積もりすぎて、まるで降り積もった雪で開かなくなった戸のように、口を開くことがきないくらい重くなってしまっているのかもしれない。
詮無い考えが頭の中を堂々巡り。窓の外から月明かりを眺めても、いつものようにきれいだと思う気持ちも湧いてこない。世界全部が色を変えてしまったようだった。
「……ううん。きっと、私が閉じこもってるだけ」
分かっていても、変えられない。分かるだけで変えられるのなら、他に何もいらない。きっとお母さんやお父さん、先生、そんなおとなだったら笑ってしまうようなちっぽけな悩み。けれど、それが自分にとっては、すさまじく重く、大事な意味を持っているのだ。子どもの世界と子どもの時間は、たぶんおとなが思っているほど簡単ではない。と、いうよりは、おとなになると、その大事な世界や時間を忘れてしまうのかもしれない。
「どうか、した、ドラ……?」
不意に暗い部屋の片隅から、声が聞こえた。彼女は悲しげな顔に柔らかな笑顔を貼り付けて、その声の主を振り返った。ベッドの奥、彼女がいつも寝ている枕の上。もぞもぞと小さな影が身をもたげる。
「ごめんね。起こしちゃった?」
「ちがう、ドラ……」
それは真っ赤なぬいぐるみ――のようなずんぐりむっくりした小動物。背中に小さな翼が生えているが、少なくとも彼女は飛んでいるところを見たことはない。
「一緒に寝たい、から……待ってた、ドラ……」
「ふふ……」
甘えたさんだ。彼女は悩みを頭の隅においやり、ペンを置いた。日記は書き終えた。悩んでいても仕方ないと、ベッドに寝転んだ。頭のすぐ横に、かわいらしい姿がある。
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