【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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30:名無しNIPPER[saga]
2017/12/24(日) 10:35:07.97 ID:3zYuh2uB0

 それは何の変哲もない男の声。けれど何か異質で、何か恐ろしくて、何か妙だった。

 振り返ってはいけないと心が警告を発していた。けれど、ゆうきは振り返らずにはいられなかった。

「人間の手を借りるか。ロイヤリティの王族も落ちたものだな」

 それは普通の男性のように見えた。けれど視界に入れた瞬間、ゆうきには何となくわかった。

 これはいけない。これはダメだ。あれは、正常な存在ではない。

「さて、お嬢さん。その2匹を渡してもらおうか」

「あ、なたは……誰? 何者、なの?」

「うん? 姿は君たち人間と同じにしてあるはずだが、どこかおかしいだろうか?」

「ゆうき、逃げるニコ! アイツに言葉なんて届かないニコ!」

「ふん。亡国の姫がよく吠える。いいだろう」

 春の陽気だというのに、どこか心が薄ら寒い。身体中から冷や汗が流れて止まらない。

(なに? 何これ? 何なの……?)

 男が天に向け腕を大きく掲げた。そして、大空へ向かい声高らかに叫んだ。



「出でよ! ウバイトール!!」



 青空が闇に沈む。視界が暗いモノクロに支配される。

 まるで、世界から色という価値を根こそぎ奪い取るように。

「な、何!? 何が起きてるの!?」

 天が割れる。ぽかぽかと暖かい太陽もきれいな青空もふかふかと柔らかそうな雲も、すべてまとめて。

 そしてその割れ目から、“何か” が現れる。

「何……あれ?」

 それはとてもおそろしいものだと、ゆうきには何となく分かった。黒々とした何か。それはまるでヘドロのように汚らしく大地に落ち、そしてヤドリギのように電柱にくるくると絡みついていく。

「邪悪なものが生まれるニコ……欲望に満ちた、とても邪悪なものニコ……」

「ダメ……だめグリ。また、ロイヤリティみたいに……この世界も、奴らの闇の欲望に、飲み込まれてしまうグリ……」

 そして、生まれる。



『ウバイトォォォオオオオオオオオオル!!』


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