【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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252:名無しNIPPER[saga]
2018/02/11(日) 18:24:21.86 ID:Vt5kauhK0

「私は、あなたの友達だわ」

 めぐみが厳しい表情のまま言う。

「だから言う。あなたも分かっているでしょうけど、暴力はいけないわ」

「わ、分かってるよ! そんなこと!」

 恥ずかしさでどうにかなりそうだった。ともえを追いかけたいというよりは、めぐみの冷たい目線から逃れたくて、ゆうきはめぐみの手をふりほどこうとした。

「もちろん、思わず手が出てしまうこともなくはないと思うわ。でも、その後のあなたは、本当にあなたらしくなかった」

 めぐみの手が、万力のようにがっちりとゆうきの腕を掴んで離さない。

「暴力を振るってしまったら、謝らないといけない。謝る時間は十分にあったのに、あなたはそうしようとはしなかった。わたしの問いかけにも、すぐに『謝る』と言えなかった。それが、本当にあなたらしくないわ」

 分かっている。ゆうきは、謝らなければならないと分かりながら、謝ることをためらっていた。しつけをすることと謝ることは別のことなのに、それを混同して、謝ることができなかった。

 分かっている。分かっているからこそ、ゆうきはそのめぐみの言葉に耐えられなかった。

「……大埜さんには分からないよ!」

「王野さん?」

「大埜さんはひとりっこでしょ! 大埜さんに妹も弟もいるわたしの気持ちなんて分からないよ! 勝手なことばかり言わないでよ!」

 自分は一体何を口走っているのだろうか。後悔、恥ずかしさ、そういったものがないまぜになって、頭の中がぐちゃぐちゃだ。だから、思ってもいないことを口走ってしまった。

「あ、いや、あ……」

 まただ、とゆうきは心の中で頭を抱える。今度は直接的な暴力ではない。けれど、言葉の暴力といってもいいような、ひどい言葉だ。ゆうきのために言葉をかけてくれためぐみに、ひどいことを言ってしまった。ゆうきはおそるおそる後ろを振り返る。

 めぐみは怒っているだろうか。怒っているだろう。しかし――、

「そうね。私、あなたたち姉妹のことをよく知りもせず、勝手なことを言ったわ。ごめんなさい、王野さん。私、きっとまた余計なことを言ってしまったのだわ」

 めぐみは寂しげな表情でそう言って、頭を下げた。

「でもね、王野さん。私はそういう顔を、これ以上ともえちゃんに向けてほしくないの。なんていうか……あなたにはやっぱり、ずっと笑っていてもらいたいから。少なくとも、家族の前では」

 めぐみはもう、ゆうきに目を合わせようとすらしなかった。

「お節介ついでに、私がともえちゃんを探してくるわ。だから、あなたは落ち着くまで家にいなさい」

 いいわね、と優しく言い残して、めぐみは玄関から外へ出て行った。

「わたし……最低だ」

 ともえだけではない。きっとめぐみにも嫌われた。ふたりが去った玄関を見つめ、届くはずのない素直な言葉を呟いた。

「……ごめんなさい」



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