【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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21:名無しNIPPER[saga]
2017/12/24(日) 10:26:45.55 ID:3zYuh2uB0

「……王野さんって、ほんと話に聞いてた通りね」

 ぴくりとも笑わないまま、めぐみが口を開いた。

「えっ……聞いていた通りって……」

「天然でときどきドジの連鎖をやらかす」

「うっ……」

 自分では否定しているが、常々ユキナや有紗から言われていることだ。

『ゆうきって天然でときどきドジだよね』

 それはゆうきの親しみやすさを表すための言葉なのだが、本人にとってはそれだけではない。とくに、ゆうきのようにそれをコンプレックスに感じていれば、なおさら。

「……帰りなさい」

「えっ?」

 悔しさに奥歯を噛みしめていると、そんな声が聞こえた。

「何か気にしてることがあるんでしょう? 帰ったら? これくらいだったら、私ひとりで大丈夫だから」

「だっ、だめだよそんなの! わたしも学級委員なんだから、わたしも一緒にやるよ!」

「でも、なりたくてなったわけじゃないでしょう?」

「そ、そりゃあ……そうだけど、でも……」

 気になること。夕ご飯のおかず。スーパーのタイムセール。反抗期の妹のこと。目の前の大埜めぐみ。そして、天然でドジな自分。言うまでもなくたくさんある。

「……一緒にやるよ。大埜さんだけにやらせるわけにはいかないから」

「そう」

 めぐみは一息つくと、もう一度ゆうきを向いた。

「じゃあ、邪魔だから帰りなさい、って言えば、あなたは帰ってくれるのかしら」

「へ……?」

 一瞬、何を言われたのかわからなかった。何を言われたかを理解しても、それを認めたくなかった。

「だから、そういう風に言えば、あなたは帰ってくれるの?」

 そんなゆうきの心情など考慮に入れる意味もないとばかりに、めぐみが追い打ちをかけるように続けた。

「なに、それ……」

「言ったとおりよ。いいから帰りなさい」

 ゆうきは温厚で、天然で、心優しく、素直な、そんな女の子だ。だからそんなことを言われたくらいで怒ったりはしない。

 ただ、怖かった。

 平然と自分に対して悪意を発露するめぐみのことが、純粋におそろしかった。

「わたし、だって……がんばって、お仕事、やってるのに……」

「? それがどうかしたの?」

 決定的だった。きっと、めぐみに悪意はないのだろう。がんばってやっていたところで「それがどうしたの?」。一生懸命やっていたって「邪魔だから」。とどのつまり、ドジで余計な仕事を増やすゆうきが邪魔だからいなくなってほしい、ということだろう。

「……ごめんなさい。わたし、帰るね」

「ええ」

 めぐみはなんでもないかのような表情で、顔を上げた。そんなめぐみの視線にあてられてから、ゆうきもようやく気づく。



 ああ、自分は泣いている。



「王野さん……?」

「っ……!」

 ゆうきは自分の鞄をひっつかむと資料室から飛び出した。


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