【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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名無しNIPPER
[saga]
2017/12/24(日) 10:27:54.73 ID:3zYuh2uB0
………………
泣かせるつもりなどなかった。
「うそ……」
ちょっとした、照れ隠しだったのだ。
―― 「お母さんが帰ってくるのが遅くてね。わたしが晩ご飯つくらなくちゃなの」
今朝から、妙に気になっていたあのクラスメイト。王野ゆうき。自分と名字がよく似ている女の子。学級委員のパートナー。
怒らせるつもりなんてなかった。ただ、早く帰ってほしかっただけなのだ。
「あーもう! 私のバカ! 私のバカ! 私のバカバカバカバカ!!」
なんでこうなのだろう。いつもいつも、口を開けば相手を怒らせたり泣かせたりしてばかりな気がする。
違うのに。本当は、優しくしたかっただけなのに。
仲良くなりたかっただけなのに。
「……どうして素直に言えないのよ、バカ」
項垂れたくもなる。何がどうしてこうなって、始業式の日からこう勘違いをさせてしまうのだろう。
「邪魔なんて思ってなかったのに……ただ、「用事があるなら帰ってもいいよ?」って言うだけでよかったのに……」
何が「邪魔だから」だ。我ながら、照れ隠しにしても尋常ではない。数分前の自分を思いきり張り倒してやりたいくらいだ。
けれど、項垂れて頭を抱えて、うだうだと言っていても時間は巻き戻らない。泣いて出て行ったゆうきも戻ってきてはくれない。
めぐみの “本当” は、伝わらない。
「…………」
昔から、「優しくない」と言われ、育った。
「どうして素直になれないの?」と不思議がられ、我がことながら損な人生を歩んでいるという自覚があった。
変えたいと思ったのだ。
素直になりたい。空回りしてばかりの優しさを相手に伝えたい。そう、思ったのに。
また変わらない? 中学二年生になっても、ずっとこのまま? 大人になっても?
「……そんなの、やだ」
崩れたままの書類の山が気になった。
仕事を途中で放り出していくのも気が引けた。
けれど。
「泣かせちゃったんだから、謝らなきゃ」
まだ遠くには行っていないだろう。めぐみは資料室を飛び出した。
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