【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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194:名無しNIPPER[saga sage]
2018/01/28(日) 10:18:20.67 ID:xIWFcIHZ0

「っ……」

 めぐみが顔を歪ませる。ダッシューはなおも、そんなめぐみを嘲笑する。

「そもそも、さっきの話を聞いていた限りでは、君は生徒会長とやらになりたくないんじゃないのかい?」

「…………」

 めぐみはダッシューの言葉に何を言い返すこともできなかった。

 そもそも、言い返す言葉がなかったのだ。

 自分はいま、何のために戦っている? フレンとブレイのため? 違う。奪われてしまった自分自身の物を取り返すために戦っているのだ。

 けれど、それは本当に必要なことか?

 意地になっているだけなのではないか?

 ただダッシューに書類を奪われて、腹立たしくなっているだけなのではないか?

 だってそうだろう。皆井先生には散々なことを言われてしまった。誉田先生だって、もしかしたらゆうきに思ってもいないことを言っただけだったのかもしれない。誰も本当はめぐみの立候補なんて求めてないのかもしれない。

 だったら、自分が立候補する意味なんてないだろう。

 意地になって、自棄になって、ダッシューから書類を奪い返す必要もないだろう?

「…………」

 手から力が抜けていく。足を踏ん張ることもできない。目の前が暗くなり始める。自分の目が、暗く濁り始めていることが、分かる。

「……うん、良い目だよ、キュアユニコ。世界とはそういうものだよ。何かを手に入れるときに、それが本当に必要かどうかはしっかりと考えなければならないね。でないと、本当は “必要でない物” を、意地や惰性で手に入れてしまうときもある。それは、本当の欲望とはいえない。欲望を満たしたとはいえないんだ」

「私……」

「想いなんて捨てろ。気持ちなんて考えるな。希望なんて、捨ててしまえ。そして、残った自分自身の欲望に向き合うんだ」 ダッシューは、まるでそんなユニコに優しく語りかけるように。「君は、本当にロイヤリティの王族を守りたいと思っているのかい? それが本当に君の欲望なのかい? この書類のように、ただ意地や惰性で守ろうとしているだけなのではないのかい? それなら、君はもう一度君自身の欲望に向き合い、答えを出すべきだ。君は、自分の欲望に素直になりさえすれば、これ以上戦う必要はないんだ。これ以上傷つく必要はないんだよ」

 ああ、自分は弱い。本当に弱い。

 欲望とは、かくも甘いものなのか。その甘さに、抗えない。きっと心が弱いからだ。だから、ダッシューの言葉が、心の奥底、柔らかい部分を掴んで離さない。

 こんなに苦しい思いをして戦う必要があるのか。この苦しみから解放されることと書類を比べて、どっちの方が大きいか。

 この苦しみとプリキュアの紋章、どちらの方が重いのか――、



「――違う。そんなの、絶対に間違ってる!」



 その強い声が、ユニコの耳朶を叩いた。



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