【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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164:名無しNIPPER[saga]
2018/01/21(日) 11:11:40.99 ID:agWmrLpM0

「目に生気が戻ってるね。怖かったんじゃないのかな?」

「……怖いよ。とっても怖いよ」

 上から振り下ろされたのこぎりを避け、その勢いのままダッシューに回し蹴りを放つ。

「だって、あなたは、誰かを傷つけても構わないって思ってる。そんな考え方、とっても怖いよ。嫌だよ」

「……面白いことを言うね」

 ダッシューは身軽な動作で後方へと飛び退り、次の瞬間には床を蹴って飛び込むようにのこぎりを突き出した。

「っ……!」

 きらめく刃がグリフの首のすぐ近くを通る。

「誰だってそうだと思うけどね。結局、人は自分の欲望でしか生きられない」

「……だからって、それは人を傷つけていい理由にはならない!」

 勇敢なんかじゃない。勇気なんて、きっとない。けれど、グリフには通さなければならない意地があった。グリフは目の前の刃の腹を、下から思い切り拳で打った。

「なに!?」

 ダッシューの笑顔が、初めて歪んだ。グリフの拳に打たれたのこぎりはダッシューの手を離れ、床に乾いた音をたてて落ちた。

「……あなたは、間違ってる。だからわたしは、あなたを叱ってでも改心させてあげる」

「思ったよりやるね。なるほど、これはゴーダーツが手こずるわけだ。だが……」

 ダッシューが手を振るう。何もないその手に、次の瞬間には凶器が握られている。それは、巨大なはさみだ。

「……だが、僕はゴーダーツとは違う。過去をいつまでも引きずるなんて、愚かなことはしない」

 ダッシューは、笑顔を引っ込めたままだった。

「僕は、僕のために。僕の欲望を満たすただそれだけのために、過去の僕をも利用する。ただ、それだけのことだ」

「なに……? 何を言っているの?」

 思い詰めたような言葉。しかし直後に、ダッシューはまた軽薄な笑みを顔に貼り付けた。

「……僕は、君に何を伝える気もない。それは、僕の欲望ではないからだ」

 ダッシューが再びグリフに向け飛ぶ。剪定用の巨大なはさみの刃が、グリフの首を狙って間髪入れずに突き出される。



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