3:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 12:25:08.72 ID:nZJI/gt30
「本日のお召し物はいかがなさいますか?」
カチカチと鳴るウインカーに紛れて質問が飛んできた。
お召し物。
パーティーに行きたくない一番の理由は、実のところそれだった。
煌びやかな布に袖を通すたび、余計なことまで思い出してしまうのだ。
半年前まで、確かにあった輝きを。
もう消えてしまった夢の残滓を。
鞠莉「……何でもいいわ」
放り投げたバッグに頬杖をついて、そう答えた。
もう自分があの友人の作ってくれた衣装を着ることもないのだから。
「そういえば、お嬢様のご学友の黒澤ダイヤ様ですが」
考えを読まれた気がして、指先に力が入った。
鞠莉「ダイヤが、何?」
「ええ、聞いた話では、なんと――」
鞠莉「嘘、ほんと? またアイドルを――」
「生徒会長に就任されたようです」
鞠莉「ああ、そう」
期待外れの言葉にどっと身体を投げ出した。
生徒会長。
ああ、ダイヤが選びそうな道だ。確か「推しが生徒会長だった」だのなんだの。
熱狂的、で収まるのかしら。
鞠莉「問題はそこじゃないわ」
ねえダイヤ。貴女はそれでいいの?
それが貴女のやりたいことだったの?
誰にともなく呟いた言葉は、曇った窓に跳ね返って消えた。
*
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