【モバマス】十年後もお互いに独身だったら結婚する約束の比奈と(元)P
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38: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/12/26(火) 21:50:58.36 ID:kmslFcGc0
「……で、つまり一人で送って行けと」

 恨みがましい声色をわざと作って言うと、上条春菜は困ったように笑った。

「あはは、その、瑞樹さんたちが、介抱はプロデューサーさんに任せなさいって」

「はぁ……」

 肩を落とす。歓迎会が散会となっても熟睡したままの比奈は、呼ばれたタクシーの座席に放り込まれていた。他のメンバーは帰宅と二次会に別れたが、どうやらほぼ全員が、比奈の介抱を押し付けることには同意したらしい。

「比奈の住所、変わってないよね?」

「大丈夫だと思います、他の皆さんも引っ越したとかは聞いてないって。そういうわけで、はい、眼鏡どうぞ」

 春菜は眼鏡を差し出してくる。
 意味が判らず、思わず首をかしげた。

「いや、比奈さんのですよ! 私のこと、ところかまわず眼鏡を薦める変な女だと思ってませんか? ……酔っぱらったままで、眼鏡が曲がったり割れちゃったりしたら、大変ですから。必ず守ってあげてください、大切な眼鏡!」

 力強く言われ、眼鏡を握らされる。ひとまず胸ポケットに挿しておくことにした。

「じゃあ、私も皆さんと合流しますので! 今日はおつかれさまでした!」

「おつかれさま」

 春菜はベレー帽をかぶると、手を振ってその場から去って行った。

「さて……運転手さん、お願いします」

 助手席に乗り、比奈の自宅住所を伝え、シートベルトを締める。
 車が走り出したとき、比奈がううん、と苦しそうに呻いた。


 脱力した人間は本当に重い。
 エレベーターを使っても、比奈を部屋まで運ぶのは一苦労だった。部屋の前で比奈の身体を揺すり、鍵を出させる。
 比奈はぐずるような声を挙げて、自分のバッグをまさぐり、鍵を取り出した。おそらくは殆ど無意識の行動だろう。
 ドアを開けて、部屋の電気を点けて、ほとんど引きずるようにして比奈を部屋の中に運ぶ。部屋の中は多少散らかっていた。徹夜するほどの締切前後ならこんなものだろう。あまり周りを見ないように気を遣いつつ、ソファーのところまで運び、床に丸まっていたタオルケットを拡げてかけてやる。

「……さて……」

 時計を見る。終電まではまだ余裕があった。比奈の状態も案じつつ、これからどうするか考えていたときだった。

「う……」

 比奈が声を挙げたので、そちらを見る。なにが起きているかわからないようだった。

「潰れてたから運んできた。大丈夫か?」

「頭……痛いっス」

「気持ち悪くない? 吐きたいとかは?」

「それは大丈夫っス……」

「なんか買ってこようか」

「水と……ウコンの……栄養ドリンクを……」

「了解。あ」胸元に入れていた比奈の眼鏡を思い出す。「これ、預かってた。眼鏡どうぞ」

「……それは春菜ちゃんのセリフっス……」

 比奈は手を伸ばして眼鏡を受け取る。

「余裕ありそうだな。よかったよ。コンビニ行ってくる。鍵借りるよ」

「はい……」

 比奈の部屋の鍵を取って、部屋を出た。



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