【モバマス】飛鳥「ボクは、宮本フレデリカだ」
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2: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 19:34:36.22 ID:TXSil8FD0

飛鳥「ボクは一体何者なんだろうか?」


ボクが今乗っているのは一両編成の電車だ。動力はディーゼルエンジンで単線の田舎らしい路線。
座席のサスペンションによる僅かな揺れを感じていると、ふつふつとそんな疑問が湧いてきた。


志希「知性と理性を持った人間という生命体じゃないかなー」

飛鳥「そんな概説的答えは求めてないよ」

志希「にゃはは、知ってるー♪」


この列車の行き先をボクは知らない。隣に座っている一ノ瀬志希の失踪旅に付き合っているだけだからだ。
とはいっても本当に行方不明になるわけではなく、志希の失踪というのは見知らぬ土地を無秩序に訪れていく行為を指す。そもそも目的地なんていうものは最初から存在してはいないんだ。それは志希の『どこかへ行っちゃったっていうのが失踪なんだよ』という主張からもハッキリしている。
ボクも概ねそれに賛成だ。社会というレールの上を走っているとたまに逸れたくなるのが人間というものなのさ。


飛鳥「ボク自身の定義について知りたいんだ」

志希「ふうん、どーして?」

飛鳥「このセカイの人口数は70億を超えるだろう? となるとやはり70億通りのパーソナリティが存在しているわけで、当然多種多様の個性が混在する。芸能界という『特別』が溢れかえっているような場所でボクが生きている意味ってなんだろう……って思ってね」

志希「わぉ、フィロソフィ〜」

飛鳥「茶化すなら話すんじゃなかった」

志希「まーまー、怒んないでよ。飛鳥ちゃんは特別になりたいの?」

飛鳥「少し違う。ボクは自分がとりわけ特別だと思うほど自惚れてはいないよ。だけど、誰でもできるようなステレオタイプの人生もまっぴら御免だね」


車窓の風景に目をやると、田園風景からの光の照り返しが眩しかった。沢山の稲が同じ様に生え揃っているのが見える。


志希「そっかー。そういう意味での自分らしさといえばフレちゃんなんかは強く持ってると思わない?」

飛鳥「む……フレデリカか。まぁ、たしかに彼女は『特別』だな。だけどボクはフレデリカのようになる事はできない」

志希「だろうね〜。結局さ、人類は配られたカードで戦うしかないんだよ!」

飛鳥「キミにしては実に月並みな答えだな」

志希「だって、そうじゃない? 自分らしさを自分以外がどうやって定義出来るの?」

飛鳥「おい、振り出しに戻ってしまったぞ。ボクはそれが理解らないと言うのに」

志希「自分探しの哲学に答えはない。だからこそ苦しい。飛鳥ちゃんなら知ってるでしょ?」

飛鳥「それは、そうだけど……」

志希「迷えるオオカミちゃんの為にあえてあたしの主観を言うなら、飛鳥ちゃんを探していること自体が飛鳥ちゃんらしいと思うな〜」

飛鳥「……そうかい」


これ以上言葉を出すことはできなかった。明確な答えは無いけど、何かにすがって納得するしかない。冷房の人工的な涼しさがいやに冷たく感じた。

改めて車両を眺めているとボク達以外は誰もいないようで、金属が軋むような電車の音だけが響いている。静かな空間だ。僅かに奏でられる音がボクの体に染み込んでゆく。
一定のリズムを刻みながら行き先不明の一両編成は走る。


飛鳥「すまない。ひと眠りさせてくれないか。瞼の重さに抗えなくてね」



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