4: ◆b0Vu8MQV5UgY
2017/12/10(日) 20:27:15.48 ID:tkpAzfiG0
お腹に溜まった粘っこい何かの吐き出し方も分からず、陰気なルビィと先生たちの日々が終わったのは、高学年に入った年の冬。
その日の先生は、比較的若い男の人。有望株として期待されていた書道家さんだったそうです。いつか、謝りにいかないと。
特別な何かがあったわけではありません。
いつもより少し大柄で、いつもより少し声の大きい人。ただ、それだけ。
でも、いつものように不揃いな文字を指摘する回数が両手で数えられなくなった辺りで、ルビィは部屋を飛び出していました。
家を抜け出し、道を駆け出し、ツリーの照明が煌めく街を彷徨い、それでも何かが追ってくる気がして、とにかく走り通しました。
いや、ルビィの癖によく頑張ったと思います。褒められたもんじゃないんですけど。
お母さん達が親不孝な娘を見つけたのは、陽の沈み切った内浦の海辺。
黒澤の面子に泥を塗ったルビィは、罪滅ぼしのように身体中を砂にまみれさせ、ポツンと座り込んでいました。
駆け寄り様にルビィを抱きしめたお母さんは、そんな必要無いのに謝罪の言葉の数々を温かいシャワーのように浴びせかけました。
「もういいの」というフレーズを何度も何度もかけられた時、ルビィは、ふと、何かを諦められたのだと思いました。
そして、自分自身は未だに諦めていなかったことに気付きました。
狂ったように泣き喚くルビィとお母さんは、今思えばちょっとした見世物だったと思います。ああ、夜で良かった。
50Res/40.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20