65: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/14(木) 06:55:26.24 ID:3WL1s/2Yo
おお百合子よ気でも狂ったのか!? 否、本人は至って正気だった。
無論、彼女だって人が空を飛べないことは百も承知。
だが、しかし、今の百合子は人でありながら人でない。
春閣下さまより与えられし素晴らしき力をもってすれば、空を飛行することなど造作も無いと思ったのだ。
事実、春閣下本人はその"力"を行使し百合子を浮かせたでは無いか!
頭に生えている小さな翼をパタパタパタとはためかし、百合子は地面に真っ逆さま。
……と、ここで僅かばかりの解説を。
ご存知765プロダクションは、古い貸しビルの三階を拠点としている事務所である。
ビルの高さは四階建て。二階と四階は空いているが、一階には『たるき亭』と言う名の定食屋が店を構えていた。
そして、今はちょうどお昼のかき入れ時。
当然たるき亭には客が出入りをし、往来にも人がそこそこいる状況である。
そんな白昼のよくある光景に突如現れた身投げ少女、これが注目を集めないことなどあるものか!
ぶべちゃ! と硬い床に生肉の塊が叩きつけられたような音が響く。
ギョッと人々が足を止めて、幸いにも誰の頭上にも当たらなかった少女の姿に青ざめる。
だが、落ちて来た百合子は勢いもよく地面から体を引き剥がすと。
「あ、ははは、はは、お騒がせしてぇ……す、すみませぇぇぇんっ!!」
何事も無かったように立ち上がり、衆目集うその場から一目散に逃げ出した。
後に残された人たちはただただ唖然とした顔で、
去りゆく少女の背中を見送ったという……そんな昼の一幕の後、である。
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