34: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/12/11(月) 06:27:56.32 ID:0U2IohVSo
「ひっ、あっ……!」
百合子の口から驚愕のうめき声が漏れる。
それもそのはず、半分に割れたPヘッドから覗く見慣れた男の頭部は今、
肉塊の支えを失ってものの見事にポッキリと直角に折れ曲がっていたのである。
当然、それは男の首が"逝ってしまっている"ことを意味していた。
つまり、この男も"百合子同様死人"なのだ。
「閣下に吹き飛ばされた直後だよ。……どうも打ちどころと姿勢が悪かったみたいでなぁ」
肉塊を再び被り直した男がケラケラと笑いながら言う。
春香が「あ、謝ったじゃないですか、それは!」と食い気味に彼に噛みつくと。
「ともかく、その肉塊は我が分身であると同時に貴様たちの従属の証でもあるのだ。
我が滅びるまでは決して肉塊も消えはせず、その間はお主らのかりそめの命も保証されよう」
かりそめの命――その言葉がどれほど百合子の胸の内をざわざわと波打ち立たせたことだろう!
消沈した様子で肩を落とした彼女に向け、春香が慌てた様に付け足した。
「し、しかし! 心配せずとも我はそう簡単に滅ぶことは無いぞ?
なにせこの地上は我が力の源となる恐怖や混沌、欺瞞や暴力で満ちておる――」
「ああ、いえ……違うんです」
「……違う、とな?」
怪訝そうな顔で訊き返し、春香はようやく気がついた。
目の前の百合子のその顔は、先ほどまでとは打って変わって
嬉しさを抑えられないといったにやけ笑いを浮かべるその顔は。
103Res/100.38 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20