81: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/20(土) 12:45:05.97 ID:/CUsXBBs0
二人は手を繋いで暗い夜道を歩いた。妹の手は温かった。
いや、自分の手が冷えていたのかもしれない。身体も、心も、冷えている。
勇者の妹「綺麗……」
丘に広がる花畑は月光の中で、神秘的な煌きを放っていた。
赤いドレスをまとったチューリップ。
儚げに揺れるカスミソウ。
青い調べを奏でるカンパネラ。
その中に佇む妹は、まるで花の精のようだった。
妹が仰向けに寝転がった。勇者も隣に横たわる。
しばらく二人は無言で、夜空の星々を見上げた。
勇者の妹「星の光にも、色々あるんだね」
勇者「星の光?」
勇者の妹「パッと強く輝いてすぐに消えちゃう星と、ぼんやりした光でも中々消えない星」
勇者「人生に近いものがあるな」
勇者の妹「そうだね。魔女さんは強く輝いて消えちゃう星。軍師さんと大富豪さんはぼんやりした星……かなぁ」
勇者「俺はどっちになるんだ?」
勇者の妹「どっちでもない。お兄ちゃんは太陽だよ。ずっと長く中心でみんなを照らし続ける太陽。きっとなれるよ。お兄ちゃんには人を惹きつける、不思議な魅力があるんだもの」
勇者「不思議な魅力、か。いまいち実感が湧かないけど、ありがとう。元気づけてくれたんだな」
勇者の妹「すごく怖い顔してたから……。もう大丈夫?」
勇者「ああ。お前に励まされて、少し気が楽になった」
勇者の妹「じゃ、あとでサンドイッチ買って」
勇者「バカ、何時だと思ってるんだ。また明日な」
勇者の妹「うん。おやすみ、私のお兄ちゃん」
妹の気配が消えた後も、勇者は花畑で星を眺めていた。
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