21: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2017/12/16(土) 17:56:44.30 ID:J5eINESa0
門番に通行証を見せ、第二の門をくぐった。くぐった瞬間、金色の光が全身を包み込む。眩しい。
壁が、床が、天井が、純金でできている。安っぽい金箔などではなく、一切混じり気のない純金。
一体どこの鉱山からここまで大量の金を掘り出したのか。掘り出すのにいくら費やされたのか。どれほどの民を酷使したのか。
勇者は周囲の純金が為政者の手垢で汚れた醜い物のように思えた。
魔女「キミの気持ちは分かる。でも、ここは笑顔を保たなくちゃダメ」
勇者「魔女、先代勇者様は随分と悪趣味なんだな。俺とは永遠に馬が合わなさそうだ」
そっと、魔女が勇者の手を握りしめた。
魔女「表面上は、馬を合わせなきゃいけないの。水でも飲んで一旦落ち着くかい?」
勇者「……ありがとう、魔女。少し驚いただけだ。純金なんて生まれて初めて目にしたもんでね」
間諜「ちょっとくらい削って持ち帰っても、パッと見じゃ分からなさそうですよね」
魔女「あははは、キミはどうしてそんな名案を思いつくのかな」
カツン、と硬い音が屋敷内に響いた。身をこわばらせる三人。誰かが来た。
先代勇者「久々の来客というんで、誰かと緊張していたら魔女、君だったのか」
でっぷりと太った男に、魔女は微笑みで返した。
魔女「やぁ、魔王を倒した勇者……いや、元勇者かな。今はバルフを治める町長様。出世したもんだよ」
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