勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
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16: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2017/12/14(木) 10:16:54.85 ID:F+cKSKnpO
面白い。大富豪が最初に思ったのはそれだった。十歳に満たない少女にしては、やけに洗練された文を使う。涙を誘う場面や心打たれる場面もなくはない。しかし、全編を通して何やら引っかかるものがあった。

大富豪「……なるほどな。核心を突いている。そこは認めよう。ただ少し気になる点がある」

大富豪「なぜ官能小説をベースにしたのだ? 誰に向けて書いた?」

勇者の妹「より多くの人に読んでもらうため……です。『そういう描写』があれば、男達は目の色変えて飛びつくって、魔女先生が」

大富豪「魔女、いらんことを教える能力だけは一級品だな」

魔女「ふふッ、面目な〜い」

大富豪「国の改革を望むのは男だけではない。子供を育てる金のない女、貴族層から執拗ないじめを受ける庶民の子、労働に駆り出される老人。生きる環境も性格も違う民を、ひとつにまとめなければならんのだ」

大富豪「淫らな描写ばかり入れて、民が感動し涙を流すと思ったか。考えが甘い、甘過ぎる。この責任は指導した魔女、お前にあるぞ」

魔女「ええー、厳しいよ大富豪さん。せっかく身を削って書いてくれたのに」

勇者の妹「魔女先生、あたしは大丈夫です。自分の問題点が見えてきた気がします。やっぱりジャンルが偏っていたら読む人も限られてしまいますよね」

大富豪「妹さん、君は賢い。十分に推敲して再び持ってくるなら、写本の手配をしよう」

勇者の妹「写本?」

大富豪「君の小説が中綴じの本となり、世界中の人の手に渡る、ということだ」

魔女「そうすると、写本する場所や人が必要になるよね」

大富豪「問題ない。タシケントの北部に写本工場を建ててある。一部の富豪しか知らない、秘密の場所だ」

魔女「ああ〜、あそこか。大富豪も妙なところに目をつけるね。あそこ岩山と濁った川しかない荒地だよ?」

大富豪「だからこそ、国の目を欺きやすい」

勇者の妹「世界中の……人の手に……」

妹の瞳はキラキラと輝いていた。








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