152: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/03/09(金) 01:05:27.91 ID:/HaAMV5s0
馬頭琴の軽やかな旋律に合わせ、衣装をまとった踊り子が蝶のように舞い踊る。
彼女が身体を回転させるたびに拍手が沸き上がった。
一人の客をもてなすために異国の楽団まで動員してしまうところが、良くも悪くも大富豪らしい。
大富豪「ここだここだ」
魔女は大富豪の隣に腰を下ろした。
後ろの派手な掛け軸が気になって仕方がない。
大富豪「気になるか。曼荼羅というそうだ。商人からは宇宙観を示した図像と説明されたが、さっぱり意味が分からなかったよ」
魔女「意味が分からないものを飾ってるんだ」
大富豪「綺麗だから飾っているだけさ」
魔女は皿に盛ってある棗をつまんで口に運んだ。
まるで王族の食卓である。
唯一違うのは、身分の低い者も同席していることだった。
理由を尋ねてみると、大富豪はバター茶をすすりながら答えた。
大富豪「指示を出すのは私だが、実際に働くのは彼ら召使いだ。誰を一番にねぎらうべきか猿でも分かるな」
魔女「民を大切にしない国は滅びる」
大富豪「そうだ。君主が聡明であれば、国民の不満を上手いこと外へ向けただろう。例えば、他地域への遠征とかな。決して内へ溜め込んだりはしない」
魔女「溜め込み過ぎた不満の中で生まれた一縷の希望。それがボクら勇者軍ってわけなんだね〜。ちょっとクサいけど」
踊り子が小刻みにタップを踏んで跳ねはじめた。
宴席から一人の酔っ払いが飛び出し、踊り子と腕を組み回り出す。
大富豪「そろそろ、敵陣営にも味方を作らねばならんな」
256Res/223.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20