133: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/02/16(金) 00:47:19.33 ID:8+YFbR/R0
勇者「やったな、便所掃除!」
死屍累々。
積み上げた死体の山に、便所掃除は一人で座っていた。
死力を尽くした。勇者も、貴族達も、皆が一丸となって死力を尽くした。
バルフはどうなったのだろう。返り血が目に入って、よく見えない。
勇者「バルフ軍の勝ちだ。テルメズ軍は一人もいない」
便所掃除「勝ったのか、俺達は」
勇者「ああ、この勝利は必ず周辺の町に知れ渡る。お前の武勇に惚れて入隊を志す男も現れるかもしれない」
便所掃除「勇者……俺は……」
大粒の涙が、頬をつたった。
気が緩むと、一気に溢れ出してくる。
あの食堂を守ることができた。
皆の笑顔を守ることができた。
自分にはまだ、帰るべき場所があるのだ。
勇者「貴族兵も頑張っていたよ。個の力では及ばずとも、集団の力で乗り切った。お前の指示を聞いていた証拠さ」
便所掃除「ああ……」
勇者「さ、泣くのはやめて軍師に報告しに行こうぜ。ひとまず、町は助かったんだ」
便所掃除は涙を拭うと、勇者と並んで歩き出した。
血に染まった牧草地。一日の仕事を終えたような、爽やかな達成感を不思議と感じた。
両手を頭上にあげ、グッと背伸びする。
便所掃除「ったく、どこの馬鹿がおっぱじめたんだろうな。肥料用に溜めてきた糞をほとんど使わせやがって」
勇者「土地の開墾も作物の収穫も、すべて命あってのものさ。糞なら、また溜めればいい。俺も軍師も協力するぜ」
便所掃除「やめろ、気色が悪い」
二人の笑い声が、晴れ渡る青空に響いて消えた。
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