134: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/02/16(金) 01:10:02.28 ID:8+YFbR/R0
数日後、食堂の前にて。
便所掃除「よし、始めるとするか」
どんな仕事にも、学ぶことはある。
学んだことは後々、必ず何かしらの形となって現れる。
テルメズ軍との戦を経て、便所掃除の中で仕事に対する意識が変わった。
この誰もが嫌がる臭い仕事も、役に立つ時はあるのだ。
兵卒から将校へ昇進した際、彼は便所掃除の仕事も並行して取り掛かりたいと申し出た。
軍師は怪訝そうに眉をひそめたものの、便所掃除の申し出については却下しなかった。
便所掃除「ちーッス、ウンコ回収しに来ました」
料理人「おお、いらっしゃい! んじゃいつも通り、トイレの掃除頼んだぜ!」
そう、便所掃除として町を回っていればこのイカした料理人に会うことができるのだ。
料理人「お前ら、よく見とけ。あれこそが立派な仕事人よ!」
中央の丸テーブルに、三人の貴族兵が座っていた。
貴族兵士A「あ、あの……」
貴族兵士B「どう切り出せばいいのか……」
貴族兵士C「便所掃除君! いや、便所掃除殿!」
便所掃除「テメェら、懲りずに食堂まで来やがったな」
貴族兵士C「違うんだ。これまで君に浴びせてきた罵声や非礼の数々、誠に申し訳なく思う……! 詫びしかできないが、どうか許して頂きたい」
貴族兵達が、そろって深々とお辞儀をした。土下座とまではいかないが、彼らなりの精一杯の謝罪らしい。
貴族兵士C「この通りだ!」
便所掃除「なんだ、そんなことか」
便所掃除「別に謝る必要はねぇよ。俺だけの力じゃない。テメェらが本気を出してくれたから、町は無事だったんだ」
貴族兵士C「そんな、僕達は……」
便所掃除「とにかく! テメェらは一人前の兵として認められたんだ。真ッ昼間から駄弁ってねぇで、ちゃんと訓練に参加しろ!」
貴族兵士A「ヒッ! すみません!」
貴族兵士B「くわばら、くわばら……」
貴族兵士C「そ、そうだった。もう訓練の時間だったのか。料理長、勘定はここに置いておくぞ。では、また会おうッ!」
脱兎のごとく駆け去っていく三人の貴族兵。その後ろ姿を眺め、便所掃除は呆れたように頭を掻いた。
便所掃除「あいつら、何も成長してねーな」
料理長「いいや、少しずつだが変わっているよ。貴族が大衆食堂に顔を出すこと自体、滅多にないからな。もちろんボウズ、お前も変わってるぜ。だいぶ、男を上げてきやがったな」
便所掃除「へへッ……ありがとよ、オッサン」
便所掃除が勇者軍騎馬隊の副将として活躍するのは、まだ先のお話。
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