103: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/28(日) 00:06:01.44 ID:PF4QKT8C0
勇者「やけどするかもしれないから、ちょっとずつ噛んで食えよ」
便所掃除「ああ、分かってる……はふッはふッ」パク
やや弾力のある皮を噛み切る。甘い。砂糖のような強烈な甘さではないが、ほんのりと微妙に感じる甘さ。
すぐに舌が痺れるような感覚と、ニンニク特有の臭みが鼻を突き抜けた。
最初に皮の甘みがあって、次に辛味と臭みがきて、最後の最後にとんでもない熱さが遅れてやってくる。味のパレードだ。
便所掃除「うわ、あっつ……。熱いし辛い! 唇がヒリヒリする。大将、水もらえないか?」
料理長「最初はみんな同じことを言う。そんで、二つ食ってやめられなくなるんだ。ほら、アイスレモンティー。マントゥにはコイツが一番良く合う。酒よりもな」
勇者「いきなり後ろからガツン! って殴られたような感じがするよ。マントゥの淡白さが、唐辛子とニンニクソースの味を際立たせるっていうか。でも牛肉の旨味はソースに負けていない」
料理長「ハハハ、いっぱしの料理研究家だな。お前さん達」
便所掃除「……辛いけど、うまい。こんなあったかい食い物を口にしたのは、バルフに来て初めてだ」
肉餡の温かさが腹いっぱいに染みわたる。
昨日まで、糞の臭いがついた硬い食パンを独りで齧っていた。
友人など、仲間など、もう二度とできないものだと思っていた。
料理長「腹が減ったらいつでもここに来い。とびきりの料理を食わせてやる。ま、金は取るけどな。ハハハ!」
勇者「時間があったら、俺も朝まで付き合うぜ。ま、金は取るけどな」
料理長「お前さんは金取っちゃいかんだろ」
暗い孤独の道に一筋の光が差したような気がした。
便所掃除「あ……やべ、涙でてきた」
勇者「いくらでも泣けばいい。俺も料理長も笑ったりしないぞ」
便所掃除「そんなジロジロ見るなよ、玉ねぎが目に染みただけだ」
勇者「お前、嘘が下手だなぁ」
便所掃除「マジだって!」
料理長「ハハハ! まったく、面白ェボウズだ」
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