勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
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104: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/28(日) 00:08:48.57 ID:PF4QKT8C0
便所掃除「国王の専属シェフ?」

料理長「昔の話さ。俺はウイグル出身でな。田舎は嫌だって、後先考えず王都に出稼ぎに行ったんだ。ちょうど、コイツみてぇにな」

料理人A「えへへ……」

ウイグル。名前だけは耳にしたことがある。
王都の北に広がるステップ地帯を移動しながら暮らす、遊牧騎馬民族だ。
可汗と名乗る一族の長が治めているらしいが、詳しいことは分からない。

獣の血をすすり、骨を噛み砕く、野蛮な民族。貴族学校だと、そう習っていた。

勇者「王都の北で遊牧してる、あの?」

料理長「そうだ。大量の羊を飼ってるんで、いつも豊かな牧草地を探し回らなきゃならなかった。冬の時は大変だったぜ、草地も獲物もありゃしねぇ。猛吹雪に凍えながら、一日中ずっと腹を空かしてたよ」

そこで料理長はいつどこでも手軽に食べられるよう、携帯食としてマントゥを開発したという。
夏と冬で肉餡に混ぜる香辛料も使い分けた。

初期の頃はカザンという小型の金属鍋で煮ていたが、仕上がりが良くないので、蒸籠で蒸す方法に切り替えた。
何度も何度も改良と失敗を積み重ね、今のマントゥは完成したのだ。

料理長「遊牧民時代の知識や経験が、こうして料理に活きてる」

料理長「ボウズ、今は辛いだろうけどよ、その経験は必ず将来どこかで役に立つ。人生に無駄なモンなんか、ひとつもねぇ」

料理長「だからよ、もうちょっとだけ仕事、頑張ってみねぇか」

便所掃除「人生に無駄なものは、ひとつもない……」

料理長の言葉を、噛みしめるように反芻する。
ソースの辛さだけが、口の中に残っていた。



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