59: ◆3s4IbQehY.[saga]
2017/12/10(日) 21:03:45.57 ID:2/dn233N0
―004―
「少し、いいかい?」
『なにかな?』
アカリちゃんの所へ行き、またミカンさんの家に戻ると私達三人は家から追い出された。
現在、家にはミカンさんとアカリちゃん、そして件の怪異しか入っていない。
だが家に入る際のアカリちゃんは、何かを決意したように、真っ直ぐな目だった。
私達三人の席を外させる程だ、きっと他にも思う所があったのだろう。
しかし、アカリちゃんもアカリちゃんで重役とはいえ自分の仕事を、
ただの仮病で少しばかり怠けた程度で、随分と重い罪悪感を抱いていたようで。
責任感が強いというか、周りの事を別の意味で考えていないというか。
「アカリちゃんは“灯台の光の役割を自分が怠けた事”を罪と思ったんだろ?」
『あぁ、リリィの仮説が正しいとしたらそうだろうね』
「じゃあ、罪の償いが“眠り続ける事”っていうのはおかしくないかな?」
『ふむ、言いたい事は分かるよ』
アカリちゃんは自分は怠けない方がよかったと感じた。
なのになぜ、彼女に憑いた怪異は余計に彼女を怠けさせるような真似をするのか。
怪異の本質が眠りという事もあるのだろうが、そうだとしてもだ。
『それは、アカリちゃんが眠る事で起きる結果を見せてさらに反省させる為だ』
「と、いうと?」
『もし、仮にミカンちゃんではなくアカリちゃんが眠り続けたとしよう』
『そうすると、周りにはどのような事が起きる?』
「え、そりゃあ灯台の光がなくなるから………あっ」
『そう、怪異はその自分がいなくなるとどうなるのかという事を見せようとした』
『彼女がいなくなることで、どれだけの人が困り果てるのかを表そうとしたんだよ』
灯台の光、つまりそれは真夜中に大海原を進む船乗り達の道標になる。
その存在であるアカリちゃんがいなくなった場合、起きる事とはなにか。
海に明かりが灯る事はなく、船は目的地も分からず波に流されてゆく事になる。
そしてきっと、眠り続けるアカリちゃんを、ミカンさんは心配することだろう。
ジムリーダーの仕事よりも、アカリちゃんの事を優先してしまうほどに。
『自分がした事を続けた場合、一体どうなるのかを伝えようとした』
『それが怪異のした役割であり、今のミカンちゃんに起こっている現象だよ』
「…だとすると、ミカンちゃんには今の僕達が見えてるって事になるのかい?」
『あるいはね、彼女に憑く際に怪異が少し形を変えたのなら話は別だね』
私達が心配している事も、アカリちゃんがどのような面持ちで灯台にいたのかも。
そして、もしかしたら、自分の身に起こっている怪異という存在の事も。
ミカンさんは知っているのかもしれない。知ってしまっているのかもしれない。
そんな事を私達が考えている時だった。
家の中で、誰かが走ってくるような、少し軽めの足音が響いた。
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