9:名無しNIPPER[saga]
2017/11/21(火) 20:02:23.01 ID:tuTmdYX90
◇◇◇
バリッ――と、カロリーメイトの箱を破る音が響く。
強襲揚陸潜水艦<トゥアハー・デ・ダナン>の操縦士控室。そこには今回の作戦に参加するSRTメンバーが集い、最後の休息を取っているところだった。
「って、おいソースケ……下手したら一週間は雪山に缶詰なんだぞ? もっといいもん食っとけよ」
もそもそと黄色いブロック栄養食品を口にするソースケに、クルツが呆れた様な声を出す。
そう言う彼は鮭の入ったおにぎりをもぐもぐと幸せそうに頬張っていた。日本びいきのクルツが、食堂のカスヤ上等兵に無理を言って作らせたものだ。
食うか? と差し出された食べかけのおにぎりを前に、宗介はきょとん、と首を傾げ、
「? いや、フルーツ味は美味いぞ?」
「これだもんなぁ……カナメにいーもん食わしてもらってるんじゃねぇの?」
「ああ、チドリの料理も美味いな」
「じゃあ、その黄色い固形食糧と愛しのカナメちゃんの手料理。これから片方しか食えなくなるとしたらどっちを選ぶ?」
「………………チドリの手料理だな」
「お前今、物凄く悩まなかったか……?」
「問題ない。カロリーメイトはプレーンで妥協する」
信じられないものを見るような目つきで同僚を凝視するクルツに、傍から様子を見ていたメリッサは苦笑を浮かべた。
「まあ、答えを出しただけ進歩してるんじゃないの? 以前のコイツだったらそもそも答えなかったでしょ」
「そうかねぇ……?」
その時、首を捻るクルツの背後で通路に通じる扉が開いた。
現れたのは整備中隊長のエドワード・"ブルーザー"・サックス中尉である。
巨体に怒りを充満させたそのプロレスラーのようなガタイの中年男性は、誰かが何かを言うよりも早く、目の前にあったクルツの首根っこを雑草を引き抜く様に掴んだ。
実際、頭を引っこ抜こうとしたのかもしれない。クルツが悲鳴を上げた。
「イダダダダダ!? ブルーザー!? いきなりなんだってんだよ畜生!」
「クルツ! 貴様、機体のAIに碌でもない台詞を仕込んでやがっただろう!
最終チェックしてたサイモンがぶったまげて、危うく4メートルの高さから落ちるところだったぞ!?」
「えー! あれ開けちまったのかよ! 俺のやる気を引き出す為のスペシャルメッセージだったのに!
自然に聞こえるようピッチの高さ調節するのに30分もぁぁぁぁぁあああ!?」
言葉の後半は悲鳴によって掻き消えたが。
どうやらクルツがM9の戦術支援AIで遊んでいたらしい。それをブルーザーが見咎めたということなのだろう。
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