10:名無しNIPPER[saga]
2017/11/21(火) 20:02:50.07 ID:tuTmdYX90
「ったく……遊ぶなとは言わんが、程度をわきまえろ、程度を」
「イエス・サー……」
ささやかな反撃のつもりか、クルツがブルーザーの嫌がるサー呼びで応える。即座に尻を蹴り飛ばされていたが。
その様子を見て苦笑を浮かべながら、メリッサが助け舟を出した。
「まあまあ、ブルーザー。作戦前だし、その位にしておいてあげてよ」
「マオか。しかしなあ……」
「AI相手のお遊びくらい、可愛いもんじゃない。ちなみになんてメッセージ出るようにしてたのよ?」
尋ねるメリッサに、僅かに逡巡してからブルーザーが何事か囁く。
次の瞬間、彼女の視線に宿る温度が氷点下にまで下がり、クルツを射竦めた。
「……サイッテーねこの変態は。ブルーザー、千切っていいわよ」
「そりゃねーだろ姐さん!?」
「いったい何をやったんだクルツの奴は……?」
他のSRTメンバーが疑惑の目でクルツを見つめる中、ブルーザーはキャップのつばに手を当てながらやおらため息をついた。
「俺も堅苦しいことは言いたくないんだがな。どんな形であれ、機体に愛着を持ってくれるのは良いことだ。
お前やクルーゾーくらいのお遊びなら、まだ可愛げもあるしな」
「んあ? あたしはともかく、ベン?」
「サックス中尉」
割り込むようにして、いつもの鉄面皮でクルーゾーが声を掛ける。
いや――もしも彼の表情を観察することが趣味だという奇特な人間がその場にいれば、僅かに焦りの様なものがあることに気づいたかもしれないが。
「ウェーバーの不作法に関しては、上官である私が責任を以て諌めておく。それより、時間は大丈夫か? 作戦開始まであまりないが」
「おっと……そうだな。分かった、あんたに一任するよ――例のメッセージは消去しておくがな」
「はいはい、大人しくお叱りを受けときますよー」
去りゆくブルーザーの背中に、クルツがひらひらと手を振る。
意外だな、と一連のやり取りを見ていた宗介はクルーゾーの方へちらりと視線を向けた。
クルツとクルーゾー。二人の出会いの場には自分も居合わせたが、およそ最悪の邂逅の仕方だったと言っていいだろう。
それ以来、二人の関係は御世辞にも良好とはいえない。クルツがクルーゾーに対し、何か下劣な報復を行ったという噂も聞く。
だというのに、クルーゾーがクルツを庇うような言動を見せるとは。
(うむ。やはりクルーゾー中尉は、上官としては適切な人材だということなのだろう)
舌戦を始めた彼らをよそに、宗介はひとり、納得したように深く頷いて見せるのだった。
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