相良宗介「HCLI?」
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11:名無しNIPPER[saga]
2017/11/21(火) 20:03:39.62 ID:tuTmdYX90
◇◇◇

 一週間後、ココとその私兵たちはソ連の山中にある寒村に滞在していた。

 天候のいい時期などにはスキー客や登山客も訪れるらしいが、生憎といまは吹雪が続き、陸の孤島と化している。
 だからこそ、がら空きだったホテルをひとつ借り切り、この時期には貴重な現金収入と、トレーラーに積んできた多少の嗜好品をもたらした彼らは村人に歓迎されていた。

 その"歓迎"の様子を見て、ココが指を差しながら大笑いしている。

「あははは! ヨナが! ヨナが子供にたかられてる!」

「……笑い事じゃないけどねっ。ほら、チョコバーはもうこれで最後だから、皆で分けるんだよ」

 わー、とチョコ菓子を受け取った子供たちがヨナから離れ、ざくざくと雪を蹴散らしながら四方八方に散っていく。

 小柄なヨナに、さらに小さな子供たちが何人もまとわりつき、菓子をねだる。ここ数日ですっかり馴染みになった光景だった。

 ヨナも慣れているかのように彼らに応対している。言葉が通じなくとも、あのくらいの年ごろの子供たちと交流するのは息抜きになるのだろう。

「ココ、僕たちはいつからお菓子屋さんになったんだ?」

 まとわりつかれて乱れたマフラーの位置を直しながら、ヨナがふてくされたように呟く。

 周囲は一面の銀世界。降雪こそ小康状態で視界がふさがるということはないが、気温は零下を大きく下回り、僅かに漏れる吐息が白く漂う。

 ざくざくと雪を踏みしめる様に歩きながら、ココは笑って首を振った。

「お菓子だけじゃないぞ。むしろ大人たちにはウォッカの方が喜ばれていた」

「なんでもいいけど、どうして武器以外を運んできたのさ」

「まあ、色々と迷惑をかけることになると思うからね。ご機嫌取りだよ」

「じゃあ、いま村長の家に行ってきたのも?」

 村長、という役職が明確にあるわけではないだろうが、ココとヨナが足を運んだのはこの村の取りまとめをしている男の家だった。

 ロシア語だったのでヨナには会話の内容は分からなかったが、話し合いは穏便に終わったらしく、いまはその帰り道というわけだ。

「いや、あれは商談。本業とは別口の、ね。ヨナがいて助かった。ここまで受け入れてもらえるとはね」

「商談、か」

 ヨナはココから視線を外し、間近に聳え立つ雪山に向けた。

 昼下がりとはいえ、雲に隠された太陽の光は弱々しく、遠くの景色は不鮮明だ。元山岳兵としての経験が、すぐに大雪が降るであろうことを告げていた。

 取引相手のテロリストが根城にしているのは、山頂にある廃棄された基地ということだが、肉眼で山の様子をうかがうことは難しい。

「今回は何を売るの? 大砲?」

「いいや。アーム・スレイブの部品だよ。正確に言えば、<サベージ>用モーションマネージャの最新データだ」

「……?」

 ヨナの表情から、彼が理解していないことを察したココが説明を続けた。



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