87:名無しNIPPER[saga]
2018/03/01(木) 19:45:37.06 ID:NjFxGLD10
「終わったよ。ごめんねー、たて込んじゃって」
「……電話の相手はドクター・マイアミ?」
「おや? ヨナ、日本が分かるようになった?」
「いや。でも最後の"ミナミ"だけ聞き取れたから」
「耳がいいことだ。今回もそれで助けられたしね――ヨナ隊員は優秀である」
「……ところで、ココ。向こうの指揮官と話してた内容だけど……」
「気になるかね、ヨナ」
「ああ――ココは、何を企んでいるんだ?」
足を止める。少年兵も追随して歩みを止めた。
目的地に着いていた。周囲には彼女の私兵が集結している。トージョとウゴを除いてだが。
彼らの視線を真っ向から受けつつ、ココは小首をかしげて見せた。雪上車の後部座席を指さして、
「……なんでバルメが死んでるの?」
無論、本当に死んでいるわけではない。ただ、顔中に脂汗を浮かべた彼女がぐったりとダウンしているという光景はなかなか珍しいものだった。
レームが応える。
「強がってここまで走ってきたんだとさ。一発いいの貰ってるってのに。命に別状はねえだろうが、山を下りたら医者にも見せた方がいいな」
「未だに信じらんねえ。素手でナイフを持ったアネゴを倒すとか、相手はターミネーターか何かか?」
肩をすくめるルツの横を通って、ココは車両の窓越しにバルメに話しかけた。
「バルメ、大丈夫か?」
「ああ、ココ……すみません。私が無様をさらさなければ、交渉も容易かったでしょうに」
「いいや、君は――君たちは本当によくやってくれた。レーム、トージョ達の方は?」
「無事だとさ。既に救助の手配もしてある――で、だ」
レームはいつもの軽薄な笑みを引っ込めて、真剣な表情に切り替えた。
「聞かせて貰いたいね、ココ。今回の作戦の真意も、この後にやろうとしてる山についても」
視線が色を帯びる。信頼、値踏み、期待。それら全てが混ぜこぜになった混沌を注がれて。
ココ・ヘクマティアルは一切の動揺も躊躇いも怯懦もなく、いつものように薄い笑みを浮かべていた。
「ああ。諸君らに話す時が来た。さあ、行こう――我々に相応しい舞台が待っている」
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