相良宗介「HCLI?」
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84:名無しNIPPER[saga]
2018/03/01(木) 19:43:49.35 ID:NjFxGLD10
◇◇◇

 緊張から解放されて、テッサは艦長席の背もたれに全ての体重を預けた。

 雪に埋もれた<ガーンズバック>3機は全機復帰できた。回収ポイントまでの移動は問題ないだろう。

 隣で直立不動を保っているマデューカスも、僅かに力を抜いたようだった。テッサ以外に気づいた者はいなかっただろうが。

「お疲れ様です、艦長。一区切り付きましたな」

「ええ。ですが、これからやらなくてはいけないことも山積みです。
 さしあたり、ヘクマティアルから流された名簿と販路の確認、情報部との折衝……といったところでしょうか」

「それと、戦術データリンクへの干渉に関してもですな――やはり、内通者でしょうか?」

 後半は声を潜めるようにして、マデューカス。

 それに対して、テッサは迷いもせずに首を横に振った。

「チェックは必要ですが、8月の件で徹底的な洗い出しをした後です。可能性は低いでしょう」

「では、外部の線が?」

「私はそう考えています」

 テッサの断言振りに、マデューカスが眼鏡の奥の瞳を見開いた。てっきり艦長は否定するものとして外部犯の可能性をあげたのだが。

「艦長。私は電子的なセキュリティ技術について専門の知識を持ちませんが、それでもミスリルのそれが非常に厳重であることは理解しています。
 アマルガムとて簡単には突破出来ないでしょう。それを、一介の武器商人が成し得たと仰るので?」

「ええ。ココ・ヘクマティアルは武器を持っています。こと電子戦に関しては、至極強力な武器を。
 彼女の資料を見ていて気づきました――」

 言いながら、テッサは目を閉じた。そのまま間を空けないように意識しつつ、言葉を紡ぐ。

「――"おしゃべりラビット・フット"です。ヘクマティアルがキャンプ・ノーから誘拐した天才ハッカー。
 タイミング的に、この作戦の為に用意した手札でしょう」

「その兎何某ならば、M9のデータリンクに介入できると?」

「世界的に見ても稀有な才能を持った人物です。
 博士号も取得している、そこらのアングラ知識をかじっただけのギークとは訳が違います。
 ヘクマティアルからの十分な支援を得られれば、あるいは……」

「対策は?」

「防壁の見直しを計ります。当面は暗号化のパターンを変更して凌ぐことになるでしょう」

「では、その様に各部門に通達を」

「お願いします」

 隣でマデューカスが指示を飛ばし始めるのを余所に、テッサは瞑ったままの眼で天井を仰いだ。


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