相良宗介「HCLI?」
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83:名無しNIPPER[saga]
2018/03/01(木) 19:42:59.13 ID:NjFxGLD10
◇◇◇

「ほらよ、兄ちゃん。返すぜ」

 レームが放ったヘッドセットを、クルツは憮然とした顔で受け取った。

「何だかなぁ、俺、今回はいいとこ無しだったぜ」

「おいおい、超神兵たる俺様とルツの二人掛かりでどうにか抑えてたんだ。むしろ誇れよ。
 お前さんがいなかったら、こっちはもっと楽が出来たんだぜ?」

「あーあー、嬉しいお言葉。一緒に基地までついてきて、凶暴な上司や整備隊長殿にそのことを話してやってくれよ。
 あと、そっちが俺を抑えてたんじゃない。俺がそっちを抑えてたの。オーケー?」

「へっへっへ、ふかしやがる」

 笑いながら、レームは防寒ジャケットの内ポケットから煙草を取り出した。寒冷地用のライターを使って着火。紫煙を肺に送り込む。

 その独特の赤いパッケージを、クルツは見逃さなかった。ぶーたれていた表情をパッと輝かせると、図々しく手を突き出す。

「あっ、マルボロじゃん。おっさんもそれ吸ってんだ。一本くれない?」

「煙草の趣味は良いらしいな。ほらよ」

 ライターごと投げてやる。クルツはヘッドセットと持ったのとは逆の手でキャッチし、片手で器用に取り出し、着火して見せた。

「サンキュー……ふぅー、一仕事した後の煙草は美味いぜ」

「全くだ。特にうちじゃ吸えねえことも多いからな。ひとしおだぜ」

「そりゃひっでぇな……うちの部隊に来るか? 喫煙スペースはそこら中にあるぞ」

「魅力的なお誘いだが、こっちの雇い主はもっと魅力的でね。ちょっとの禁煙くらいは目をつぶることにしてる」

「納得。若くて頭の切れる、美人のボスか。羨ましいね。うちの姐さんも、もうちょっと可愛げがありゃあ――」

『――可愛げがありゃあ、なんだって?』

「いぃっ!?」

 ヘッドセットから漏れる、地獄の底から響くようなメリッサの声にクルツは思わず咥えていた煙草を取り落した。

 どうやら回線が開きっぱなしだったらしい。そういえば、マイク感度も最大にしたままだ。

『呑気に談笑とは恐れ入るわー。帰ったら凶暴で可愛げのない上司とやらは何て言うのかしら?』

「いやっ、これは違くて! そう、姐さんに可愛げがあったらそれはもう姐さんじゃないっていうか――」

『いいからさっさと戻ってこいこの×××!
 1分以内に機体を復帰させなきゃケツに砲弾を突っ込んでハンマーで叩いてやる! 返事は!?』

「イエス・マム! ――ああ、くそっ。おちおち煙草も吸えやしねえはこっちも一緒か。
 じゃあな、おっさん――次は白黒つけようぜ」

 ライフルを担ぎ、騒がしく喚き立てながらその場を後にするクルツを見送って、レームは煙を吐き出した。

「次がないことを祈るぜ……あるとしても、狙撃戦はできんな。あんなんがいるんじゃ、俺もロートルかねえ」

 だが、おそらく"次"はくることになる。

 レームは雪上車に向けて歩き出した。仲間たちも集結しつつある。
 その中心で少年兵を随えた武器商人が、いつものように笑っていた。

(仲間にしたかった、か――嘘じゃねえんだろうが)

 だが、ココがそれだけの為に今回の作戦を計画したとは思えない。

 全滅の可能性というハイリスクさ。それなのにリターンが返って来るかは相手次第。

 ココ・ヘクマティアルは優秀な"商人"だ。その彼女が計画したとは思えない。いや――

 現状、自分に見える範囲ではそう思えないということだ。

(さぁて、ココは何を考えてるんだかね……)

 疑念を胸中に浮かべながら、レームは煙草を携帯灰皿に押し込んだ。


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