7:名無しNIPPER[saga]
2017/11/21(火) 20:01:08.29 ID:tuTmdYX90
◇◇◇
ソビエトの軍港で、ルツとトージョは自分たちがここまで乗ってきた船をぼんやりと眺めていた。
いつものタンカー船――ではなく、ソ連軍の輸送艦である。どういうコネを使ったのか、ここまで運んでもらったのだ。
荷の積み下ろしを終えて、いまは出発前の休憩をとっているところである。ここからしばらくはトレーラーで、物資を運ぶ軍の尻を追っかけることになる。
冷たい潮風が吹きつける中、防寒着を着込んだルツが暖かい缶コーヒーを口にしながらぼやいた。
「しっかし寒いな。武器を売るにしても、なんでこんな担当区域外を選んだんだか」
「本部からの仕事でもないみたいだしな」
同じく缶入りのココアを一口分胃に落として、トージョが応えた。
メンバーの中でも、ルツとトージョはよくつるむことが多い。歳も近く、ノリが合うのだ。以前はここに、もうひとり加わることも多かったが。
「お、お嬢だ。ヨナ坊も一緒か」
ルツが目ざとく二人の姿を見つけた。何やら二人で一冊の本を一緒に眺めているようだ。
「微笑ましいな」
トージョが微笑を浮かべる。そのとなりで、ルツは意地の悪い笑いを浮かべた。
「眺めてるのがASのカタログでもかぁ?」
「……マジか。そういや、ヨナの方、ちょっと嫌そうな顔してるわ。しかし、この距離からよく分かったな?」
「そりゃー狙撃が専門ですから」
冗談めかして肩をすくめるルツをよそに、トージョはAS、ASか……と何度か確認するように呟いた。
「なあ、ルツ。ココさんってASが嫌いに見えるんだが、お前はどう思う?」
「はぁ?」
訳が分からない、というようにルツが片眉を跳ね上げた。
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