67:名無しNIPPER[saga]
2017/12/18(月) 20:26:20.59 ID:AHCstnE90
◇◇◇
「……ここまでの怪物でしたか、ココ・ヘクマティアルは」
テレサ・テスタロッサは艦長席で静かにそう呟いた。
認めなければならない。ヘクマティアルの命と、ミスリルが保持する唯一のラムダ・ドライバ起動の鍵である"相良軍曹"の命。
個人的な感情を抜きにしても、その天秤がどちらに傾くかなど明らかだ。
確かに武器商人は幸運に恵まれていた。相良宗介と過去に繋がりのあった少年兵を引き入れていたこともそうだ。
だが、それを抜きにしてもこうまで見抜かれるとは。
(それだけ、ヘクマティアルが優秀だった……いえ)
彼女の優秀さを差し引いても、そこには不自然なものを感じる。
まるで、ヘクマティアルが最初からそれを予期していたかのような――
「戦闘指揮官としてはともかく、策謀家としては一流のようですな」
思考の海に埋没しようとしていたテッサを引き戻したのはカリーニン少佐の声だった。
この状況でも冷静な雰囲気を崩しもせず、モニターをじっと見つめている。そんな彼が言葉を続けた。
「しかし、ヘクマティアルはここからどうする腹積もりなのでしょうか。確かに、サガラ軍曹はミスリルにとって得難い人材です。
それでも、我々はテロリストに譲歩などしない――できないといった方が正しいでしょうか」
そう、確かに相良宗介を犠牲に武器商人一行を撃滅するというのは割に合わないトレードだ。
だが、そもそもミスリルは損得勘定で行動する組織ではない。相良宗介を救うために、テロリストへの武器供給を許すという選択は有り得ない。
カリーニンがわざわざそれを口にしたのは、最終的にその命令を下さなければならないのはテッサだったからだろう。
彼女に覚悟を決めるよう促した。あるいは、覚悟を量ろうとしたのかもしれない。
だが、テッサの顔に緊張は浮かんでいなかった。肩をすくめて、カリーニンの言葉に首を振る。
「そうですね――けれど、過去の情報と、ここまでのやり取りから察するに。
ココ・ヘクマティアルがわたしの思っている通りの人物なら、これで手打ちになるでしょう」
「と、言いますと?」
テッサの両脇に控えるマデューカスとカリーニンが眉根を上げる。それと同時に、アーバレストの集音マイクがココ・ヘクマティアルの"要求"を拾った。
『――そちらの指揮官と話がしたい。我々は降伏を申し込む』
ほら、ね? とでもいうように、テッサは両脇の男たちに肩をすくめて見せた。
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