50:名無しNIPPER[saga]
2017/11/26(日) 02:43:35.85 ID:9ajXHJzP0
◇◇◇
雪上に伏せっていたクルツは2、3度目を瞬かせた。
クルーゾーの奇策によって発生した激しい閃光と音はここにまで届いていたのだ。
木立の中にいたメリッサと比べて、戦場を俯瞰できる位置にいたクルツに対する影響は大きい。
「ったく、事前に言ってくれてたらいいのによ……」
起伏の陰から、気絶したナイフ使いを雪上に転がすクルーゾーの様子が伺えた。
その姿に文句を言うクルツだが、顔には笑みが浮かんでいる。
初対面が初対面だった為、今となってもクルーゾーは苦手な相手だ。個人的なイメージは最悪といってもいい。
だが、共に戦う仲間としてなら最高に信頼できる相手だ。それを口にすることは、おそらく永遠にないだろうが。
ともあれ、クルーゾーのお陰で敵が一人減り、勝機は見えた。
もしもこの状況に敵側が動揺してくれたのなら、自分に狙撃のチャンスが巡ってくる可能性もある。
クルツは抱いたライフルの感触を確かめながら、こちらと相対している二人の狙撃手の様子を探ろうとし――そして、そこでようやく違和感に気づいた。
向けられるプレッシャーが、ひとつ減っている。
(なっ!? どこに――)
答えは後頭部が教えてくれた。
ゴリッ、と硬い銃口が押し付けられる感触が。
「どんな凄腕かと思えば、こんなに歳若ぇ兄ちゃんだったとはな……俺もロートルかねぇ。ま、いいさ。銃から手を離しな」
背後から中年男性の声が響く。髭面の飄々とした男。敵の中で唯一の特殊部隊出身者――レームブリック元少佐。
地に伏したクルツの背を跨ぐようにして、最強の私兵がそこに立っていた。
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