29:名無しNIPPER[saga]
2017/11/22(水) 22:19:19.58 ID:290cDT/E0
「ふざけてる場合じゃない。撃たれる! あの白い奴!」
ヨナが窓ガラス越しに指さしたのは、4機のM9の中で唯一散弾砲を装備している機体だった。
(いや、よく見ると細部に変更が見られるな。何らかの試験機か……?)
ココはその機体を睨む。自分の知らない機体だ。およそ正式なものではない。第三世代、M9系列には間違いないだろうが――
「ねえ、ココったら!」
思考が流れかけたココに、再びヨナが呼びかけた。
ヨナの勘の鋭さは部隊でもトップクラスだ。彼が撃ってくるというなら、確実に撃たれるだろう。
だが、ココは口元の笑みを崩さなかった。右手を銃の形にし、その機体へ突き付ける。
「いいや、撃たせない。見ていたまえ、ヨナ。我が世界蛇は、既に世界を巻き取った」
敵ASの頭部機関砲がこちらを指向する――ヨナが、ココを庇うように車両の床へ引き倒そうとする。
その動きを抱き留め返して、ココは哄笑を上げた。
「――ヨルムンガンド。正義の傭兵たちよ、怪物の尾を仰ぐがいい!」
果たして、機関砲は撃たれず。
そして地響きと共に、白い津波が立ち上がった。雪崩はASを飲み込み、そして平等に被害をもたらさんと雪上車へ迫る。
迫り来る白壁を見ながら、ヨナは思った。まるで悪魔だ、と。
身の程知らずにも己を眠りから覚ました愚か者たちを飲み込もうとする伝説の悪魔。それが自分達を狙っている。
だがその怪物の前に立ちふさがる者がいた。
無論、実際に雪崩の前に飛び出したのではない。
助手席に座る眼鏡をかけた黒人男性は、冷静に迫る雪崩を見つめ、手にした起爆スイッチを押し込む。彼がしたのは、ただそれだけ。
そして"ただそれだけ"の結果として、悪魔は真っ二つになって死んだのだ。
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