28:名無しNIPPER[saga]
2017/11/22(水) 22:18:48.85 ID:290cDT/E0
◇◇◇
「早く早く! 来るよ来るよ!」
興奮気味に言葉を繰り返しているのは雪上車にまで駆け戻って来たココだった。
榴弾が着弾した瞬間、他の私兵達も雪上車に飛び乗っている。ただひとり、雪上車の傍でしゃがみこんでいるワイリを除いて。
ワイリ。かつての異名はワイリー・コヨーテ。FBIから目を付けられている爆弾魔。
既に雪崩の前兆である振動が人にも感じられるレベルになっているというのに、彼の指先は震えもせずに己の仕事を遂行していた。
「ワイリ、行けるな!? 私は君の技術に全幅の信頼を置いている。命を預けてもいいほどに!」
「いいからココも乗ってください危ないですよ!?」
「オオウ!?」
車中から伸びてきたバルメの手で引きずり込まれるココを追うようにして、ワイリも立ち上がった。
「準備完了です、ココさん。いつでも行けます」
「なぁ、大丈夫かよワイリ。雪山心中は御免だぜ?」
助手席に乗り込んだワイリに、ラゲッジスペースで銃を抱えるルツがぼやく。
ちなみに彼の指定席がそんなところになったのは、出発の際、バルメとココのいる後部座席に意気揚々と乗り込もうとした結果だった。
ココと自身に対するセクハラに憤慨したバルメの手によって"ポイッ"と投げ込まれたのだ。
不安そうなルツの表情をバックミラー越しに見ながら、運転席のレームがへっへと笑った。
「そりゃあ心配になるわな。慌てん坊のワイリくん、爆弾の向きは合ってるか?」
「レームさんこそ、タイミングをお間違え無く。下手に動くと全滅です」
「わーってるさ。しっかし、本当に無茶な作戦だよなぁ、ココ」
雪上車の運転席に後付けされたコンソールを準備しながら、レームが後部座席に乗り込んだ雇い主に顔を向けた。
「最後にもう一回だけ聞かせてくれ。本当に、ここまでする価値があるんだよな?」
「レーム、ココのすることにケチをつける気ですか?」
「いいさ、バルメ。レームの疑問はもっともだ――そして、一片の迷いと動揺なく答えて見せよう」
車内にいる全員に聞こえるように、胸を張ってココが宣った。
「――価値はある。彼らとの戦いには、大いなる価値が」
「ココ!」
遮る様にヨナが叫ぶ。演説をぶとうとしていたらしいココが、肩透かしを食らって口を尖らせた。
「もう、なんだいヨナ! いまから超絶格好いい台詞を吐くところだったのに、拍手喝采、感激のチューは後にして……」
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