295: ◆Bc4KZX4MNU[saga]
2021/08/28(土) 23:04:20.06 ID:zsCwlIW10
泣いた女の手を握る青年
(面倒の予感しかしない)
係員は口にも顔にも出さず、即座に判断する
だが、しかし―――ふと、京太郎はウインク一つをしながら人差し指を立てた
そして音に出さずに唇のみで言葉を伝える
『もういっかい!』
(なるほど)
「ごゆっくり〜! いってらっしゃ〜い!」
営業的な営業文句と共に営業スマイルでゴンドラの扉を閉めた
そして再び密室、息をつく京太郎が咳払いをして良子の方を見る
水を差されたけれども、その気持ちがおさまることもない
「良子、さん」
「あ、はい」
涙が止まった良子の眼をしっかりと見つめる
その赤い顔、お互いわかっているのだ
しっかりと―――伝え合ってはいるのだから
「俺も貴方がラブで……大好きです。愛してます」
ニッと白い歯を見せて笑みを浮かべる京太郎
良子は再び瞳一杯に溜めた涙を流しながら、京太郎の頬に両手を添えた
彼だって理解している。二度目だが今回は違う
切羽も詰まっていなければ、気持ちの余裕の無さも意味が違ってくる
京太郎も手を良子の背に添えて、すぐそばに近づいてくる感覚を受け入れた
二度目のキスの味―――きっと二度と忘れないだろう。その夕焼けも、瞳も
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