266: ◆Bc4KZX4MNU[saga]
2020/10/08(木) 03:43:53.06 ID:iYX4OPw+0
仄かに輝く体、徐々にあふれる粒子は魂なのか別のなにかか
輝く手を見つめ、京太郎は瞳を僅かに潤ませる
強くあったつもりだった。それほど気にせずいたつもりだった
「戻れる、帰れる……みんなの、とこに……」
「須賀、くんっ……」
呼ばれた声に、意識が引っ張られる
忘れていたわけではない。忘れるということを、可能性を
「か、戒能さん……俺っ、最後に戒能さんにいいとこみせれたかな?」
「見せてもらいましたっ、でも、それでも……またもう一度っ」
「わ、忘れないから絶対!」
京太郎のすぐ傍に寄って、良子はそのまま胸に飛び込む
抱き合うようになる京太郎と良子
ギュッと握ればその感触はしっかりとお互いに届く
「忘れないっ、忘れてたまるかっ……忘れるなこの気持ちっ」
言い聞かすように、言葉にする
「いかないでっ、いやですっ……まだ、まだ返事もっ」
「必ず、会いに―――」
「待ってなんてあげませんっ、私がいきます!」
強いそんな言葉に面食らって、言葉を失う
「私は、我慢弱いんですっ……それに約束っ」
「あっ」
「須賀君とは沢山あるんですからっ、麻雀やるって言いましたし、もう一度、遊園地……行くって言いましたっ!」
「も、もちろんですよ。絶対いきましょう……絶対」
抱きしめる。約束を噛み締めるように、良子を抱きしめる
そして、徐々に感覚が抜け落ちていくのも同時にわかってしまう
僅かに力が緩んで、京太郎がふらつく
「須賀君っ」
「か、戒能さんっ……良子さんっ!」
「っ」
お互いの瞳を見合う
あの観覧車でのときのように、ハッキリと
そうして、笑みを浮かべた京太郎が頷く
「俺は、生きますからっ、これで最後じゃ……ないからっ」
薄れゆく意識の中、しっかりと言葉にする
「必ず、死んでも生きる―――約束します、からっ」
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