95: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/22(水) 23:05:58.16 ID:1X342Du80
声高に叫び上げながら、宝木の視線は記者傍聴席を一瞬見る。両方とも2.1という良好極まりない視力が自慢の彼の眼は、“懇意”にしている某新聞社の記者が絶妙のタイミングでシャッターを押したことをしっかりと確認した。
(#^Д^)「聞こえますかこの声が!!南首相、これは貴方に向けられた、平和を愛する数万の群衆の声なんですよ!!」
大嘘もいいところだ。南政権発足後デモ隊自体は国会の度に嫌がらせの如く動員を繰り返しているが、その人数は1000人を越えることすら極稀にしか無い。序でに言うとデモ隊の平均年齢は余裕の60越え、まぁ早朝ゲートボールクラブ辺りの基準で言えば若いと言えなくも無いだろう。
今朝方確認した限りでは、せいぜい3、400人と言ったところだろうか。少なくとも、どれだけ好意的にバイアスをかけても1000人を越えているようには見えなかった。
だが、それは宝木にとっては瑣事に過ぎない。極端な話、50人も集まっていれば彼にとっては“十分”だ。
(#^Д^)「南首相、貴方は極僅かなサンプリングから導き出された、見せかけの支持率は高いかも知れない!ですが実際には、貴方の軍国主義時代への回帰には国民が“No”を突きつけているんです!!
その証左が、外で響くあの声だ!!」
【10000人の群衆】がおらずとも、【議事堂の中まで届く声】が嘘偽りでも、宝木がそれを「存在する」と叫ぶことによって彼の意志を“忖度”した多くのマスコミ達はこぞってそれらが「ある」ことを前提に記事を書き、番組を練り上げる。
そうして、最も上手に「権力に立ち向かうイケメン共栄党党首」の構図を作り上げた会社には、日本海を挟んでユーラシア大陸にある幾つかのご近所さんから他言がはばかられる“スポンサー”が紹介されるという仕組みだ。
(#^Д^)「首相はいたずらに国民の深海棲艦に対する危機感を煽る前に、対話を含めた“血が流れない解決法”を模索するべきです!それこそが、首相たる者の責務だ!
────以上です」
ボロい仕事だ。
さも舌鋒鋭く与党を追及したかのような素振りで壇上から降りつつ、宝木は内心で舌を出す。政権運営なんて七面倒なことに携わらずとも、国会議員なんて立場なら儲ける方法は幾らでもある。
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