96: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/22(水) 23:11:50.61 ID:1X342Du80
席に戻りながら、宝木の興味は既にこの後に転がり込んでくる“マージン”の算用に移っている。なおも各党の質疑応答や答弁は続くが、そもそも今回議題に上がっている法案はどう足掻いても成立の仕様が無い。気にするだけ時間の無駄だ。
(*^Д^)(明日の報道次第だが、基本的には最近ご無沙汰だった日ノ出テレビ辺りに仲介すっかな〜。
後でスポンサーリストも見とかねえと。二千万は固いかなー、いやいやここは少し謙虚に見積もって──)
繋がっているマスコミからは、テレビ視聴率や新聞購読数の低下が著しいこの時代に高額スポンサーを紹介してくれる“神様”として。
スポンサーからは、日本の帝国主義に歯止めを掛けるために「マスメディア」支配の橋頭堡を造ってくれる“同志”として。
双方からどんなに少なくとも五百万、下手をするとサラリーマンの生涯年収に匹敵する「謝礼」が送られてくる。これが浮かれずにいられようか。
思わず鼻歌を歌ってしまいそうになるほどの陽気。実際足は机の下で軽くステップを踏んでいる。
ふかふかの絨毯が敷いていなければ、下手くそなタップダンスの音が室内で場違いにも響き渡っていたことだろう。
( ^Д^)(これだから泡沫政党の党首はやめらんねえや)
世間から大して注目されていないから、自分さえ基盤の地で当選できれば後は適当な候補を立てて“誰が当選するか”程度の感覚でポップコーンを片手に見ていられる。支持者も多くが妄信的なので、とりあえず“毅然と戦っている”ように見せかければ勝手に支持を続けてくれる。
外患誘致罪適用も視野に入りかねない“仲介業”に関しても、殆どのメディアは共犯である以上口をつぐむしごく一部の真っ当なメディアもたかが10議席そこそこの政党を追いかけたりはしない。そしてほんの少し電話をしていれば、定期的に何千万が金庫の中を潤す。
全く、真面目に仕事をしている政権閣僚の連中はバカじゃないだろうか。そんな嘲りにも似た感情が胸の内に沸き───
( ^Д^)「………ん」
ふと、手元に与党である国政党が用意した今回の法案に関する資料が目に入る。
.
自身が送る人生の順風満帆ぶりに人知れずハイになっていた気持ちが落ち着き、まだまだ答弁が続いていることに気づいた宝木は舌打ちする。
“退屈な時間”を埋め合わせる意味合いで、彼は何の気なしに資料を捲り喫茶店に置かれた新聞感覚で目を通し始めた。
( ^Д^)(………本当、無謀な法案だな)
本当に流し読みをしただけで、ほんの僅かでも政治を囓っている人間ならすぐに解る程度にはその法案の内容は滅茶苦茶だった。
いや、これは正確な表現ではないか。法案それ自体の筋は通っているし、ざっと読んだ限りはよく練られている。
だが。
( ^Д^)(【艦娘三原則】に手出しは御法度が過ぎるだろ首相さんよ)
第一条。艦娘は人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条。艦娘は人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条。艦娘は、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない。
自身が制定に携わった法案であり国際条約だ。資料など見ずとも、いつでも諳んじられる。
( ^Д^)(大半の国の首脳にとって、艦娘ってのはただの兵器であって欲しいんだ)
日本の独占状態に亀裂を入れて上手い具合に自国にも艦娘を実装できたとして、この“揃いも揃って見た目は麗しい美少女”という厄介な特性を持つ【兵器】を戦争に使えば間違いなく世論という強大な敵との戦いに晒される。深海棲艦という、“艦娘でなければまともに戦えない”共通の敵に対しての投入ならいざ知らず………例えば国家間紛争に使われれば、間違いなくベトナム戦争後期におけるアメリカのような光景が世界中で散見されることだろう。
( ^Д^)(かといって、深海棲艦の全滅前に“対人戦闘への投入”まで前例が出来ちまうと、それはそれで都合が悪い)
現在「自国製の艦娘」を保有する国家は、日本、アメリカ、ドイツ、イタリア、ロシア、イギリス、フランス、【丹陽】として数隻譲渡された雪風を含めるなら台湾も加わり計8カ国。
200に迫る国が存在するこの世界に対して、決して高い割合とは言い難い。
中でも、25000隻に迫る日本の保有数は群を抜いている。6個に及ぶ空母機動艦隊や太平洋戦争の頃より鍛え抜かれてきた精鋭の戦車部隊と連携すれば、小国なら片手間で制圧できるほどの圧倒的な戦力となり得る。
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