15:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:50:56.06 ID:sxZEr0ye0
上司にプレゼンする資料は作ってはいるものの、蘭子の希望を全部そのまま再現っていうのはおそらく現実的ではない。
取り敢えず企画書を作って出してみよう。
弊プロダクションがブラックであることはわかりきっていたことであるが、こういった細かい資料作り含め大体の雑務もプロデューサーに丸投げである。
16:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:51:36.24 ID:sxZEr0ye0
確か今日のレッスンは終わっている時間のはずだ。
レッスン室では、蘭子は一人居残りで自主練習しているようだった。
鏡に向かって集中しているようなので、少しだけ扉を開けて、こっそり覗くことにした。
17:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:52:19.91 ID:sxZEr0ye0
こっそり覗いている背徳感もあってか、心臓がドキドキと早鐘を打つ。
手に汗がじんわりと滲み、思わず唾を飲み込んだ。
単なる『アイドル』ではなく『担当アイドル』が、必死にもがいて輝こうとする瞬間を、俺は今、見ている。
18:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:52:57.01 ID:sxZEr0ye0
「聞け! 我が唄を! 刮目せよ! 我が演舞を! その咆哮に酔いしれるがいいわ!」
息を呑んだ。
蘭子の背中に、白と黒の翼が見えた気がしたからだ。
19:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:54:40.86 ID:sxZEr0ye0
「ぴゃっ……!?」
小動物を思わせる声が耳に届いた。
お前そんな声も出せるのか。
20:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:55:25.20 ID:sxZEr0ye0
それでも、どうしても。
「なあ、何で神崎はアイドルをやろうと思ったんだ?」
蘭子は急な質問に対し少し目を泳がせてから、再度こちらに向き合う。
21:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:56:12.09 ID:sxZEr0ye0
やっぱり言ってることはよくわからない。
だけど見ればわかる。
同じ空間に居れば感じる。
22:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:57:05.92 ID:sxZEr0ye0
言ってることがよくわからないから?
蘭子のポテンシャルなら普通にやってればそこそこなんとかなると思ったから?
予算が取れないから無理だと言われたから?
23:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:57:53.42 ID:sxZEr0ye0
『妥当』とか『無難』とか、都合の良い言葉で飾られた責任放棄だ。
ただの思考停止の愚か者だ。
俺は『神崎蘭子担当プロデューサー』なんだ。
24:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:59:52.05 ID:sxZEr0ye0
言葉を口に出すのが怖かった。
覚悟を問われるのが嫌だった。
責任を負うのが面倒だった。
25:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:01:13.05 ID:sxZEr0ye0
そこからは怒濤の日々で、あまりよく覚えていない。
寝る間を惜しんで仕事をして、眠気を通り越して気絶するんじゃないかと思うときもスタドリで体に鞭を打ちながら、やるだけのことをやった。
先輩から段取りやスケジュール管理など基本的なノウハウのアドバイスを貰いに行った。
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