5:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 18:40:29.34 ID:AW4FyFFm0
なんだって?
り、"霖天翻身(りんてんほんしん)"です……。
あの、攻撃を回避するときに使う技なんですけど、脱力した両腕に勁を(オーラみたいなもの)練り込んで、
相手の勁と同調あるいは反発させて攻撃の流れを逸らすっていうか、そういうのです。
うまくいくとあたかも胡蝶のように術者の体が翻身するらしいが、控えめにいっても暗黒舞踏にしか見えないから困る。
一応由来もある。流天なんちゃらの開祖である老師が霖雨の中で演舞を披露したところ、
見物人はびしょびしょに濡れてしまったにも関わらず、演舞を終えた老師一人だけが一滴も雨に打たれていなかったという。
そういう逸話があるので"霖天翻身"というわけだ。開祖が誰かは誰も知らない。
ここでこの技を使うことになるとは思ってもみなかった。
不覚をとったというべきだろう。
でも辞めるのなら今何を見せてもおんなじことか。
俺の心中に一抹の寂しさが去来した。
有香は突如として視界から消えた俺に困惑しているようだった。
きょろきょろしてる後ろ姿を見ているだけで一時間は過ごせそうだ。
残念なことに気付かれるまで一秒もかからなかった。振り向きざまにしゅっと裏拳が放たれる。
ぎゅるんという腰の音が聞こえてきそうな激しい拳が襲いかかった。
「やあっ!」
俺はまた屈んで避ける。
後ろ回し蹴りといいなぜか執拗に顔面を狙ってくる。こ、怖い。
だが、これで終わりだ。
しゃがんだまま右手に勁を流し込む。
そして、立ち上がる勢いそのままに有香の小さな顎に掌底を――。
とん、と。
寸止めした。
打拳の精粋、"天青仰掌"だ。
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