モバP「中野有香と怪しい武術プロデューサー」
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33:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 19:33:28.43 ID:AW4FyFFm0

たかが一般人相手にこんなに雁首揃えてやってくるとは。
蛇老会とはよほどやることがないと見える。いつも麻雀してるのか。

俺は間近に来た組長(会長?)にそう訴えかけた。
声が出せないので視線でのみだが。

「いや、そうともいえねえよ」

なに。

「"孤龍戴天"の名は、その筋じゃ有名だぜ」

「聞いてるぜ、お前さんの華々しい武功の数々は」

……。

プロデューサーに就く前、俺は"流天"を求めてあてもなくさまよっていた。
職を転々としながら、やにわに"流天十勁"を奮ってはチンピラやヤクザ相手に鬱憤をはらしていたのだ。
弱きを助け、悪をくじく。そういう建前のもと、はりぼてのヒーローを演じていた。

ただ単に俺つえーがしたかっただけだったのに。自分の腕試しがしたかっただけなのに。
そいつが俺の"流天"だと信じて、かけらも疑わなかった。

ついたあだ名が"孤龍戴天"。たった一人で組織を壊滅させる恐るべき"龍"として、
俺の名はブラックリストの一面を飾るようになった。という噂だ。真偽のほどは定かではない。

だが、それも何年も前の話だ。今更持ち出されても困る。
というかさっきから俺のことばっか話しているけど、そもそも狙いは俺じゃないはずだ。
有香のことを話せ。有香はめっちゃカワイイと、そう話せ。

「おいおい、勘違いしてもらっちゃ困るな」

「あんな小娘一人に、そこまで固執するはずがねえだろう」

「お前、自分の首にいくらかけられているか、知らねえのか?」

――。

まさか。

有香ではなく。

プロデューサーの肩書きが邪魔だったのは、俺だけではなかった。
社会的な地位を持ったまま行方不明にでもなれば、しかるべきところが捜査に動くはずだからだ。
彼等にとってもそれは好ましくなかったのだろう。

しかし流転の身になった俺ならばどうとでもなる。
全て踏まえた上でプロデューサーを辞めろなどという、迂遠な要求をしてきたのだ。

つまり最初から、狙いは俺だったと。




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