モバP「中野有香と怪しい武術プロデューサー」
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32:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 19:30:58.28 ID:AW4FyFFm0

潮の香りがして目が覚めた。

月明かりがまばらに床に差し込んでいる。

周囲にはうずたかく積まれた土嚢に、錆のはいったドラム缶の群れ。
遠くからはかすかに波の打ち付ける音が聞こえてくる。
見上げると所々はげ落ちた屋根から、きれいな月が覗いていた。

湾口近くの廃倉庫か、これもよくあるパターンだな。

俺は粗末な椅子に座らされて、両手両足を縛りあげられていた。
胴体もがっちり椅子にくくりつけられている。
口にはやっぱりガムテープ。むがむがむがむが喋れない。

後ろを振り返ると黒服が二人。仁王のようにそびえ立っていた。
体格がいい。腕もそれなりだ。こいつらも蛇老会か。

やがてごごごごっと音を立てて、倉庫の入り口が開かれた。

いくつもの影が俺に向かって伸びてくる。逆光のせいで誰が誰だか判別不能だ。
十人あまりはいるだろうか。影の長さからやせっぽちの丸眼鏡がいることだけはわかった。

「お目覚めかい」

おかげさまで。



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