16:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 19:02:28.03 ID:AW4FyFFm0
「押忍! 中野有香、いきますっ!」
どうやら覚悟は決まったようだ。
有香が目を閉じてふー、はーと深呼吸する。
足下に膨大な勁が蓄えられていくのを感じる。やはり彼女には才がある。
もし本気で鍛えたらどうなるか。俺は有香の中に潜む怪物を幻視した。
大蛇か虎か、はたまた龍か。いずれにせよ――。
彼女がかっと目を見開いた。
「はっ!」
発声、からの飛跳。
大地がガォンと轟いた。びりびりと激しく大気がうなりをあげる。
震脚――紛れもない"雷天脱兎"だ。事前に勁を練ってガードしていなかったら俺もどうなっていたか。
この勢いでは痺れるだけではすまないだろう。恐るべき天性。ここまでアイドル要素皆無である。
彼女は空高く舞い上がり、マーライオンの遙か上、事務所の二階の窓がゆうゆう覗けるほどに高高度に達した。
最高点は俺よりも高いかもしれない。赤いハチマキとツインテールが遅れがちについていく。
そして。
マーライオンの頭上を飛び越えて。
水中に。あー。
どぼん。水柱。
俺はバスタオルを片手に、いそいそとバッグの中をまさぐった。
黒い固まりが取り出される。
一眼レフはこういうときに役に立つ。
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