12:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 18:52:30.92 ID:AW4FyFFm0
……白熱したので帰りが遅くなってしまった。
しかも次のレッスンの予約まで入れられる始末だ。
有香は覚えがいい。結局、今日一日で五つ同時に取れるまでになってしまった。
まず内勁を練ることができる、その時点で常人とは違うことがわかる。
彼女には間違いなく天賦の才がある。
それも"流天十勁"に最適な体の軽さと柔の精神を兼ね揃えている。
ともすれば達人の域まで行くかもしれない、いや、ことによっては――。
だめだ。
いけない。
俺はそれを望まない。彼女には彼女の"流天"があるはずだ。
あと一回、一回教えたらそれでお終いだ。退職の準備はすでに整った。
ヴーヴーと、スマホが唸りを立てた。俺はちっと舌打ちをして応答する。
「おい、いつまで"プロデューサーさん"を続けんだい?」
ドスの利いた電子声ががなりを立てる。この業界は本当に奥が深い。
そっちの筋の人が、堂々と脅しにかかってくるってんだから。
空は鈍色、雲が重く立ちこめている。
逸話には諸説ある。
老師が放ったのは実は一息八撃ではなく、一息十二撃であったという話もある。
晴れ間を導く縦横無尽の天連打。もしそれが本当だったとしたら。
"曇天看破"は、未だ成らずか。
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