11:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 18:50:42.83 ID:AW4FyFFm0
一息八撃、それこそが"曇天看破"の要諦である。
体内に練り込んだ勁を外部に放出し、周囲360°(正確には立体角で4π)すべての状況を即座に把握して、前後左右に目にも留まらぬ八連撃を浴びせかける。
外部に発した勁を外勁と呼ぶが、これがレーダーの役割を果たし目標の位置座標と予測進路を教えてくれるのだ。
なんちゃらガンダムのマルチロックオンと似たようなものだと思ってくれればいい。
八つの球を一挙に補足する。後は両手を動かすだけで事足りる。
最低限の速さは必要だが重要なのは勁の流れだ。流れを掴めばピンポン球の方から自然と手の平に吸いついてくる。
ぱぱぱぱぱぱぱぱっ。
左に四つ、右に四つ。
見事に手中に収まった。
「す……!」
久しぶりだが成功した。ほっとする。
ぽかんと口を開けて唖然とする有香を横目に、俺は得意げに解説を始めた。
"曇天看破"の由来はこれまた謎の開祖にある。
ある年のこと、厚く雲が張り二月もの間日の光が現れないという異常気象に見舞われたとき、
老師がはるか剣山の頂まで飛ぶように舞い上がり、一息八撃を繰り出して雲中に切れ目を作ったという逸話が元となっている。
敵に包囲されたときに放つとたいへん効果的な技であり、また連続攻撃としても応用できる。
しかし現実に使う機会はまずないので宝の持ち腐れもいいところだ。せつない。
「ど、え、え……?」
とてもいい反応で嬉しくなってしまう。有香の反応は本当に素直だ。
他人に見せる機会なんてめったに無いからなおのこと気分がいい。
教える側はいつだって楽しいものだ。
よし。まずは四つから始めてみよう。
「い、いえっ、三つからで……!」
やはりチャイナ服は似合っている。
俺はピンポン球を五つ手に取った。
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